ショットガン・バクシー。ロックウェルのギャング団、グレイブ・ディガーの武闘派幹部だったその男は、頭のネジが二、三本どころか纏めて全部吹っ飛んじまってるんじゃないかという勢いで話の通じないイカレた野郎で、敵味方関係なく死体を量産するキチガイだというのが専らの評判だった。そのファッキンな気狂いギャング、図体のでかい気紛れな猫みたいな男が、俺の前では時に従順な犬みてぇになる。馬鹿みたいに俺のことが大好きで仕方ない、可愛い可愛い俺のカボチャ野郎。
◇ ◇ ◇
今日は丸一日事務所に閉じ込められて書類仕事に勤しんでいた俺とは対照的に、ロックウェルの中を駆けずり回っていたらしいバクシーは。カサブランカの俺の部屋に入ってくるなりその長い腕をにゅうっと伸ばして俺の身体を背後から抱き込んで。ぎゅうぎゅうと腕に力を込めて抱き締めながら、俺の後頭部に頬を擦りつけて深く息を吸い込んだ。
「はぁぁぁぁーーーー、一日おシノギ頑張った後のジャンは効くわぁ……」
「アホか……嗅ぐなっつーの」
鼻を鳴らすみたいにして、俺の耳の裏や首筋の匂いを嗅ぎ回るバクシー。いつものことだしいい加減慣れてもいいんじゃないかと自分でも思うんだが、やはり気恥ずかしさが先に立つ。さっきシャワーを浴びたばかりだから臭くはねぇはずだが、シャワーを浴びたってことはつまり諸々の準備も済んでいるってことで。こいつのよく利く鼻はそういった匂いも嗅ぎ取ってるんだろうと思うとどうしたって恥ずかしくって仕方がない。
「はぁ……石鹸のいい匂い……興奮するぅ……あ、でも洗ってないジャンの匂いもそれはそれで大好きなんだけどぉ」
「カッツォ……オメェは犬か」
「ジャンのバター犬にならいくらでもなりたいワン」
「バター犬て、おま……」
馬鹿チンポ野郎の口から飛び出した卑猥な単語についつい過剰反応しちまった俺の耳を、熱くぬめった舌がねろりと舐め上げた。その感触に思わずぶるりと身体を震わせた俺の鼓膜を、低い囁き声がねっとりと犯していく。
「石鹸の匂いに混ざってさぁ……匂いがする。俺が作ったアレ。オメーのケツに塗り込んであるのが、分かる……」
「…………ッ」
「支度、してくれてんだなぁ……スッゲェ、嬉しい……」
「そういうのをいちいち言葉に出して言うなっつーの」
俺の尻の上の方にぐりぐりと股間を――もうすっかり硬くなっちまってる勃起を擦りつけ。俺の耳に突っ込んだ舌でねちねちと音を立てて耳の孔と同時に鼓膜を犯しながら、バクシーが囁く。
「なぁ。見せてくれよ。俺を欲しがってるジャンのアソコ。見たい。見せて――見せろよ」
「――ッッ」
可愛いおねだりから一転、捕食する雄の気配を漂わせるバクシーの声に、頭の中が一瞬にして真っ白に弾ける。
(――あぁ、クソ、まだ触られてもいねぇってのに……)
耳への愛撫と恋人の声に煽られてアタマだけでイッちまった俺の膝からかくりと力が抜ける。崩れ落ちかけた俺を支えたバクシーは、そのまま易々と俺の身体を持ち上げて数歩進んだ。ベッドに俺を下ろしたバクシーは、起き上がる隙を与えず上に圧し掛かってくる。二人分の体重を受け止めたベッドが嫌な音を立てて軋んだ。ベッドの悲鳴を聞きながら俺たちはキスを交わす。俺の上に乗り上げたバクシーのチンコが腹の辺りに当たって、ズボン越しでも分かるその硬さと熱さと――それから、先端から漏らしちまってるんだろう、野郎の先走りの匂いに煽られて、腹の奥が疼いてたまらなくなっちまう。
「なぁ、ジャン。見せて」
唇を離したバクシーが灼けつくような眼で俺を見下ろしながら、言う。どっちのものかも分からない唾液で濡れ光っている唇をべろりと舐め回す長い舌が、眩暈がしそうなほどにエロい。
「クッソ……勃ってると脱ぎづれぇんだよ……」
文句を言いながらも俺はズボンと下着を纏めて引き下ろしてベッドの下へと投げ捨てた。さっきアタマでイッちまった時に溢れ出た先走りの液がチンコの先っぽとパンツの間で糸を引き、限界を迎えてぷつんと途切れる。切れた糸が太腿に貼り付くひやりとした感触にすら性感を煽られて、自分のケツの穴がひくつくのが分かった。
「あぁ……ジャン……おめぇのアソコから、匂いがする……俺を欲しがってひくついてんのが見えなくても分かるぜ」
俺が脱いでいる間に自分も革ズボンを脱ぎ捨てていたらしいバクシーが、テメェの勃起チンコを擦りながら熱に浮かされてるような目つきと声でそう言って。その手つきに合わせるみたいに空気中に充満していく、野郎が撒き散らす興奮した雄の匂いに嗅覚と脳を侵された俺は。ベッドに仰向けに寝転んだ姿勢で自分の脚とケツを持ち上げ、尻にあてがった両方の手で割り開くようにして。恋人の目の前に、興奮でひくつく自分のケツの穴を――野郎を受け入れるための性器になっちまってるアソコを曝け出して。
「ン――ッ」
「あぁ……もううっすら開いて、中の粘膜が……見えてる……」
俺の太腿の裏に掌をあてがって、脚を更に押し広げさせたバクシーは。露わになった俺のアヌスを、興奮で蕩けたみたいになってる目で見下ろして。きゅぅ、と目を細めてゆっくりと舌なめずりをした。
(――あ、喰われる――)
そう思った次の瞬間にはもう、バクシーは俺の股間に顔を埋めていた。だが、俺の予想と少しだけ違ったのは、野郎が食らいついた先が俺のチンコじゃなく――ケツだったことだ。舌先がケツの穴の縁に触れた瞬間、俺は反射的に腰を引いていた。
「や、めろってバカ、汚ぇ、だろ、が――ッ」
押し退けようとしても、引っ繰り返されたカエルみてぇな体勢じゃ野郎の頭に指先を触れさせるのが精一杯だ。
「おめーの身体の中で俺が汚えと思うような場所があるわけねぇべ」
涎を纏った長い舌を見せつけるみたいにして、だらり、口の中から垂らしてみせたバクシーは、躊躇うことなくそれを俺のケツの穴に押し当て。表面をぬるぬると何度か行き来させた後、硬く尖らせたそれを俺の中へとねじ込んできた。
(――カッツォ……!!)
「それに、よぉ……奥まで念入りに洗ってあるから味も匂いもほとんどしねぇ」
「感想、いらねぇ……ッ」
ぬぷ、ともくちゅ、ともつかないような水音を立てて抜き差しされるバクシーの舌。いくら野郎のそれが人並み外れて長いとはいえ、ケツの中の〝いいところ〟までは届くはずもない。それなのに、穴の周辺の粘膜をぬるぬると出入りされるだけで馬鹿みたいに気持ちよくて。
自分の脚の間から見えるバクシーの舌が、俺に見せびらかすためにわざとゆっくりと出し入れされる。その動きの卑猥さに――それを見て興奮している俺の顔をじぃっと観察するバクシーの視線に煽られた俺は。
「あ、あ、あ、やべぇ、いく、イクイクイクイク――ッ」
バクシーの舌にケツの中を犯されながら、俺はいともあっさり達してしまった。俺のケツから舌を抜き出したバクシーが、今度は俺の腹の上に散った精液に舌を伸ばして。俺の腹筋に塗り広げるみたいにしながらそれを舐めていく。
「ん、馬鹿……そんなの舐めなくていい、っつーの……」
「今日の俺はジャァンの犬だからよ」
まだまだ、舐めさせてもらうぜご主人様。
そう言ってニタリと笑った俺の可愛い獣に白旗を掲げた俺は。逞しい首に腕を伸ばしてキスを強請った。