大きな赤い空洞に飲み込まれたちんこの表面を、粘つく液体を纏った熱い肉の塊がぬらぬらと這い回る。亀頭の括れの形状を確かめるみたいにぐるりとなぞった舌先が、裏筋を辿りながら辿り着いた尿道の中にゆっくりとねじ込まれた。堪えきれなかった快感に、太腿の筋肉が引き攣って震える。
「――ッ、フゥ……ッ」
「ン、こぇが好きなんけ?」
「ファンクーロ、咥えたまま、しゃべんな……ッ」
快感で歪んだ視界の中、上目遣いにこちらを見上げる気狂い野郎と視線が合った。俺を真っ直ぐに射貫くその視線は、野郎の挙動に翻弄される俺の表情をつぶさに観察しているかのようで。獲物を検分する爬虫類めいた男の目つきにひどく神経を逆撫でされる。
(カッツォ……見てんじゃねぇよ……!!)
声になっていないはずの俺の不満が届いたかのように、鈍く光る銀色の双眸がスゥ、と細められたかと思うと、じゅ、という音を立てて啜るようにちんこを吸い上げられた。
「――あぅ!」
「ん、じゅ……ぷぁ……」
まるで甘いモンを与えられたガキみたいな有様でこちらの股間に食らいついている男。その銀色の頭を見下ろす俺の胸中は、複雑な感情で満たされる。
これまでの言動から察するに、この気狂い野郎は元々男が好きだったってわけじゃないはずだ。そんな野郎が、耳を覆いたくなるような派手な水音を立てながら俺のちんこに一心不乱にしゃぶりついているのだ。
(――そんな旨いモンじゃねぇだろうによ)
生憎と俺自身はこれまでの人生で野郎に突っ込んだことはあれどチンポをしゃぶった経験なんてないもんで、断言はしきれないが。これまでにオツキアイのあった女にしろ、娼婦にしろ、こいつほどに夢中になって食らいついてくるような相手は他にいなかったことを思えば、外れてはいないだろう。
(――あぁ、ロイドの奴だったら、こんな感じなのかもしれねぇなぁ……あの変態看守、ちゃんと生きてるよな?)
あの日、怪我をして意識も朦朧としてる、そんな状態だったくせに、必死に俺に縋って引き止めようとしていたロイドの姿が不意に思い浮かんだ。あの時ロイドが言ってたのは――「あいつが来る、殺されるから逃げてくれ」とそう何度も何度も口にしていた、その〝あいつ〟は――。
今、俺のちんこを咥えて熱心にしゃぶっているこの気狂い野郎に他ならなかったんだろう。あの時は全然分かっちゃいなかったが、今なら、分かる。ロイドのあの怪我は、こいつに――こいつが率いていた、ゴンザレスを制裁するために集められたGDの兵隊どもに、やられたのに違いない。
「――アッ! それ、やだ――――ッ」
バクシーが尿道に挿し込んだ舌を、奥の奥まで捩じ込んでこようとしやがる。物理的にそこまで奥の方に入るわけがないのは分かっているが、それでも。大量の涎をぼたぼたと垂らしながら蠢く舌と、上目遣いに俺を見据える蛇みたいな眼光から、俺を犯しつくそうという野郎の執念みたいなものを感じ取っちまう。
この男は、気狂いじみた言動からは想像もつかないほどに勘が鋭い。多分今も、俺がこいつとのセックスとは関係のないことを考えていたのに気づいて、それが気に入らなかったに違いない。
「あ、ゆる、ゆるめ、て……ッ」
今目の前にいてお前を犯している男が誰なのかを弁えろ、と言わんばかりの強引な舌遣いに、俺は泣きながら赦しを請う。だが、それは野郎を煽っただけに過ぎなかったようで。
「ン、はぁ…………、――クッ」
俺の下っ腹に彫られている刺青の上を撫でていく、熱い吐息。気狂い野郎の口から吐き出されるそれに、微かに上擦った声が入り混じる。俺のちんこを咥えているだけで興奮してやがるのかと詰って嘲笑ってやりたい気持ちと。
(俺で、そんなに興奮しちまうのかよ――ッ)
女みたいに柔らかい手応えも滑らかな手触りも、濡れそぼって男を迎え入れる膣もねぇ。硬いし、あちこち傷もあるし、突っ込むためにはクソ面倒な下準備がいる。それなのに。
「ハァ……すっげ、ジャァンの先走り……カウパー、どぷって出てきやがった……」
ごくり、音を立ててバクシーの喉仏が上下に動く。長い舌でべろりと自分の口周りを舐めた野郎の表情は恍惚としていて。
「なぁ……もっと、もっとくれよ、ジャン」
「名前、呼ぶな――ッ」
「ジャン、いくとこ、見せてくれよ……な? 俺の口に出せよぅ、ジャン……」
こういう時にこいつの声で名前を呼ばれると、頭の芯が痺れたみたいになってどんどん訳が分からなくなる。俺がそうなっちまうことをこの野郎も恐らく分かっていて、やめろと言えば言うほど、執拗に俺の名前を口にしやがる。それが分かっているのに「呼ぶな」と言うことを止められない――煽ると分かっていて言わずにはいられない――俺も、きっとどうかしちまっている。
「あ、でる、でる――ッ」
泣きそうな声を上げながら腰を浮かせた俺のちんこを、バクシーがいっそう深く咥え込む。でっかい口の中で喉の奥まで迎え入れられた先端がギュッと締め上げられる感覚。野郎の頬が内側に強く窄められて、じゅぼぼ、という下品な音を立てて吸い上げられたらもう、耐えられるはずがなかった。
「――――――ッ!!」
息が喉の奥に詰まって声にならない悲鳴を上げながら、俺は腰を何度も跳ねさせて盛大に射精する。凄まじい勢いでザーメンが出ているのが分かるが、それでもバクシーは俺のちんこに食らいついたまま放そうとはしない。
「あ、は、ぁ…………」
射精は終わったのにまだ余韻を引きずっちまって、呼吸が整わない。ずるり、萎えた俺のちんこを口の中から引きずり出したバクシーが身を起こして、俺を見下ろした。太い頚に浮き出た喉仏が上下に動いて、野郎の口の中に出した俺のザーメンを飲み下したことを知らしめる。
「すーっげぇ量だったナァ。旨かったぜェ」
笑いながら俺を見下ろす野郎がべろりと出してみせた舌の表面には、俺が出したザーメンの残滓がまだ色濃くこびりついて粘った糸を引いていた。それを目にすると、言葉にしようのない羞恥が背筋を駆け抜けていく。
「――――ッ」
羞恥に耐えきれず視線を逸らした俺のケツに――窄まりに濡れた感触が宛がわれるのが分かった。潤滑剤を纏ったバクシーの指が俺のアヌスを解そうとしている――野郎の勃起を挿入するために。達した余韻で脱力した俺の身体は、難なくすんなりとそれを受け入れちまう。
こうしてまた今日も、なし崩し的にこいつとやることになるんだな、という諦めにも似た気持ちと。どうして俺はこいつを拒否できないんだろうという自分への疑問と。
何もかも失くして空っぽになっちまったと思っていたはずの自分に、まだ残されていたもんがあったのかと。こいつがこんなに執着するだけの何かが自分の中には存在しているんだろうかと。
そう、思って、俺は。
(本当に執着してんのは、どっちなんだか、な……)
まだ直視したくない現実から目を逸らしたくて、ゆっくりと瞼を下ろした。