自己満BLガチャ!!より。
寝ているジャンにいたずら(意味深)しようと、ベッドに浸入したバクシー。でも、ジャンの寝顔が可愛くて、ずっと眺めちゃった。
フィラデルフィアで親父のお使いを済ませた俺は、通りがかった深夜配送のトラックをヒッチハイクし、俺の風体だか両脚のホルスターに突っ込んであるショットガンだかに怯える運転手をなだめすかしてロックウェルに戻ってきた。ロックウェルなんてシケた街に用事のあるトラックなんざそうそういるわけもねぇんで、何台か乗り継ぐつもりでいたんだが。運が良かったのか運転手がビビり散らかしてたせいなのかロックウェルから十マイルほど離れた場所まで乗っけてもらうことができたんで、そう大した距離でもねぇなと後は歩いて戻ってきた。
そして今。さっき確認した時計によると深夜二時をちょっと回ったところ。カサブランカの二階の廊下を忍び足で歩いている俺は、期待に胸を弾ませていた。俺が目指すのは自分の部屋――と床の穴で繋がっている、恋人の部屋だ。そこには間違いなくジャンがいて俺の帰りを待っているはずで、その姿を思い浮かべただけで俺の胸は火が灯ったみてぇに温かくなる。
もちろん、今夜中に帰るとは言ってなかったし、時間も時間だ。ジャンが起きて待っているなんて期待は端からしてねぇ。俺がいないと上手く眠れないとか言って起きて待っててくれたらそりゃあ可愛いことこの上ないとは思うが。いつでも一緒にいられるとは限らない身としては心配の方が先立っちまう。俺のためにもジャンには健康で長生きしてもらわなきゃならねぇからな。俺がいなくても平気だとは絶対に言ってほしくないが、俺がいない時にも健やかに生活していてくれねぇと心配でシノギに集中できなくなっちまう。
ただ、独り寝の身体を持て余したジャンが手遊びに勤しんでいるというえっちな展開なら大歓迎だ。そういう場面には以前に一度だけ遭遇したことがある。俺のじゃないとイケない、俺の熱くて太いのが欲しいって泣き言を言いながらケツに指突っ込んでオナってるジャンを見た時の脳天が痺れるみてぇな高揚感と来たら。その光景だけは網膜にしっかり灼きついてるが、その時自分がどんな風に振舞って何を口走ったのかは、正直記憶が曖昧だ。それぐらい、衝撃的だった。
まぁ、それで警戒されちまったのか、それ以来一度もそういった場面には遭遇していないんですけどね。しょんぼり。
穴を覗いて見下ろしたジャンの部屋は暗かった。微かに聞こえる規則正しい寝息から、ジャンがそこにいることが分かって俺の胸はまた熱くなる。ジャンのオナニーに乱入できないのは残念だが、寝ているジャンに悪戯するっていうのもそれはそれで悪くない。寝てる間に好き勝手されたとなるとジャンの性格からして怒りそうなものだが、挿入する手前なら多分許される。目を覚ますまでは俺のチンポは挿れずに、ジャンの身体を弄ったり舐めたりしゃぶったりさせてもらって、ジャンが目を醒ますのを待つ。そんでもって、それまでにあの快楽に貪欲な身体に火を点けちまえば、ジャンの方だって収まりがつかなくなっちまうってのは言うまでもないことで。
「すまねえなぁ……ジャン……」
こんな男が恋人で。でも、これは俺がお前を好きだからこそそうなってるわけで。お前以外の人間には一度もそんなことをしたいなんて思ったこともないし、これからもそうなる予定はないんで、どうか許してくれ。
そんなことを考えながらジャンの部屋にそろりと降り立った――普段なら雑に飛び降りているところだが、寝ているジャンを起こさないように床を掴んでぶら下がるみたいにした――俺は、ジャンの形に膨らんでいるベッドにいそいそと歩み寄る。
起こさねぇようにそうっと布団をめくると、ぐっすり寝入っているジャンの姿が現れた。一人なんだからど真ん中で大の字になって広々寝てても良さそうなもんなのに、いつも俺が寝ている側のスペースが空いていて、その場所に片腕を伸ばすみたいにしているその寝姿に。俺の胸の内っ側の柔らかい部分が抉り取られたような気分になった。
ジャンにとっては俺が隣に寝ているのが当たり前のことになっちまってるんだなって、そう、不意に実感したっつーか。何だろうな、上手く言えねぇ。ただ、その姿を見た瞬間、俺の胸も股間もどうしようもなくズキズキと疼いてたまらなくなった。
俺のために空けられたスペースに滑り込むと、そこに伸ばされていたジャンの指の先が俺の身体と触れ合う。だが、深い眠りに入っているらしいジャンは特にそれに反応することはなかった。そのことに安心するような、すこし物足りないような気持ちになりながら、俺は自分から腕を伸ばしてジャンの身体をそうっと抱き寄せる。
あっさりと腕の中に転がり入ってきたジャンは、さすがに何か感じるものがあったのか、瞼を微かに痙攣させているのが見て取れた。だがその目が開くことはなく、代わりに匂いを嗅ぐような様子を見せる。
(――やべ、そういやシャワー浴びてなかったわ……臭ェかなぁ……)
試しに自分でも匂いを確かめようとしたが、どうやら寝る前にシャワーを浴びたらしいジャンの、石鹸のいい匂いばかりが嗅覚を刺激してくる。人間の五感って自分の得たい情報を取捨選択しますよね。ボク、自分の匂いよりジャンの匂いを嗅いでいたいなぁって感じで。
「ん……ク、シー……」
アホな言い訳を脳内で繰り広げる俺の腕の中で、ジャンが何事かを呟いた。まだ何も悪戯してねぇってのにもう起きちまったのかと慌てて覗き込んだジャンの表情に、俺は目を奪われる。ジャンの両の目はしっかりと閉じられていたが、口元はひどく嬉しそうに緩められていて。そして。
「バクシー……」
多分、俺の名を、呼んだ。はっきりとした単語の体にはなってねぇし、俺の願望がそういう風に聞き取ったんだろうと言われれば反論の余地はねぇんだが。そうして俺の胸元に擦り寄ってきたジャンは、そこでまた匂いを嗅ぐような様子を見せた後、満足そうなため息をひとつ、ついて。安心したような寝息を立てながら再び深い眠りに落ちた。
(こんなん、悪戯なんてできるわけ、ねぇワァ……)
俺がいなくて寂しいって思いながら眠ってたんかなァ、とか。俺の匂いでそんな安心したような表情を見せてくれちまうのか、とか。そういうことを考えると胸が熱くて。それと連動するように股間も熱く漲ってきてはいるんだが。俺の腕の中で胸に貼り付くみたいにして眠る安心したような寝顔を見ていたら何だか到底悪戯なんてできるような気分じゃなくなっちまって。
結局、朝日が昇るまでそのままジャンの寝顔を見続ける羽目になった。……可愛かったです。ずっと見てても飽きねぇくらい。