電気を消せ、という恋人の要求に素直に従ったバクシーだが、実のところ彼は大変に夜目が利く。無論、昼のように見える、とまではいかないが。少なくともジャンが考えているよりは遥かに色々なものが見えていることには間違いがない。
古びた薄っぺらいカーテン越しに差す月影だけが頼りの室内で、ジャンの目には相手の輪郭がかろうじて見て取れる。だが、バクシーからは、大きく開かれた恋人の脚やその間でそそり立つ性器の形状がはっきりと見えていた。
(スゲェ、綺麗だ……)
普段、陽に晒されることがないせいか、身体の他の部位よりも際立って白く見えるジャンの太腿。その艶めかしさに、無意識に飲み込んだ唾液が喉を通る音が、暗がりの中に響く。
「……ッ」
その音の大きさにバクシーの興奮を嗅ぎ取って、ジャンの性器がビクリと震えた。持ち上がった先端からとろりと溢れ出した粘液が糸を引きながら白い太腿の上に垂れ落ちる。それを目にした瞬間、バクシーは矢も楯もたまらずにジャンに飛び掛かった。
「わ、ちょ、いきなりすぎンだろーが!?」
非難めいた言葉は耳の右から左に素通りさせ、先走りの液で汚れた太腿をべろりと大きく舐め上げる。舌先に滲むしょっぱい体液はもちろん、上等なシルクのシャツのような真っ白な肌の舌触りにいとも容易く興奮を煽られた。夢中になって舌を這わせ、甘噛みし、吸いついて幾つもの痕を残す。
「ン、バカ、やろ……痕、つけんなって、いっつも――」
「どーせこんなとこ、誰にも見せねぇじゃン」
(つーか、ジャンの生太腿見た奴は殺す。目を潰してから、なるべく苦しめて痛くして殺す)
まだ存在していない相手に脳内で処刑を宣告しながらひとしきり満足するまで太腿を舐め上げた後、自らの手で刻んだ腰の刺青になだめるようなキスを繰り返し落として。それからすっかりと濡れそぼった性器を口に含むと、不満を訴えていたジャンの声もあっという間に欲に濡れて快感を強請る言葉を紡ぎ出す。
「気持ち、いい、バクシー、もっと……」
このまま一度口の中で受け止めるか。それともギリギリで堰き止めて、続きは身体を繋げてからにするか。思案しながら大きな掌で真っ白な太腿を撫でさする。手で触れてもやはりそこは滑らかで、この上もなく気色が良かった。
(後で、夏になっても太腿は出さないでくれ、ってお願いしなきゃナァ)