お題箱にもらったお題より。
バクシーの片想いポストめっちゃくちやかわいくて何度も読み返してニヤニヤしております。よければぜひ片思いバクシーのお話をぜひ774さんの小説で読みたいです!!
自分たちから声をかけてきたくせに、ハラが据わりきっていねぇのかどうにも不安そうな面構えが四つ。そのシケたツラが、胃袋にぶち込まれたビールと肉のおかげだろう、どんどんと明るく血色のいいものになっていく。それにつれて、連中の目の中に――ジャンを見つめる四対の視線が熱を帯びたものになっていくのが見て取れて、俺は込み上げてきた舌打ちを温いコーラで飲み下した。
ジャンの野郎は、どうにも男にモテすぎる。
まずは、親父。あんなに大事にしていたルガーをあっさりくれてやったのも驚きだったが、自分に食ってかかるジャンと殴り合った時にだって、可愛いお顔が腫れ上がったりすることのないように手心を加える大サービスぶりを見せていた。うっかり相手を殴り殺しちまうようなあの親父に、そんな手加減ができたなんてビックリだわ。
それから、マックス。初対面でボコボコにされたってのに、いつの間にやらジャンに運転手兼子分みてぇな扱いされて、それが満更でもねぇってツラしてやがる。こき使われる度に口では文句のオンパレードだが、あのパイセンのそれはパフォーマンスで、内心ではジャンのことを気に入ってるんだってのが分かっちまう。その程度には付き合いも長いもんでよ。
そんで、俺。このまま寂れたロックウェルでクソつまんねぇギャング人生を送ってくぐらいだったら死んだ方がマシなんじゃねぇかって腐ってた俺のど真ん中にジャンが風穴をぶち開けた。ジャンと一緒にいると、今が人生のクライマックスかよって思うような高揚感にずっと包まれてる感じがする。下手な麻薬なんかよりもよっぽど上等の、中毒性のあるクスリみてぇなもんだった。
今、俺たちの目の前で飯食ってるこいつらも、きっとそのうちジャンに夢中になる。テメェの人生の中心がジャンになって、ジャンのために動くことが喜びになる。そんな予感に、俺は胸の中だけで大きくため息をつき。またひと口、温いコーラを口に含んで飲み下した。
そんな俺の肩に、ジャンの身体が軽くぶつかってくる。どうやら連中の一人が言ったことにウケて笑った拍子に身体がぐらついたらしかった。
「――っと、悪ィな」
いいってことよ、オメーの身体の一つや二つ、いつでも受け止める準備は万端整ってる。そんな軽口を返そうと開きかけた俺の口は、だけどそこについ今し方食い終わったはずの分厚いサンドを突っ込まれたかのように言葉を失って固まっちまった。
笑いながら俺を見上げるジャンの顔は、久々のアルコールのせいかほんのりと色づいていて、俺を見上げる蜂蜜色の瞳もいつもより潤んで見える。それが、いつかの――ジャンの腹に、あの、引き締まった腹筋とエロい腰骨の浮いた白い肌に俺の手でGDのスミを刻んだ後の行為を思い起こさせて。店のテーブルの下で、俺はどうしようもないくらいに勃起させちまっていた。
あの時、ジャンが俺を受け入れてくれたのが嬉しくってソファーと風呂場で一発ずつやってもまだ収まらなくって。寝落ちたジャンの寝顔をオカズにシコりながら、これから先もジャンとこういうことができんのかなって、俺の胸は期待に膨らんでいた。だが、世の中はそんなに甘くなかった。
後日、ジャンと二人っきりになった時に、我ながらあからさますぎるぐらいにやりてぇなって素振りを見せた俺を、ジャンはあっさり無視してはぐらかした。俺の期待に気づいていたはずなのに、だ。
あの日のアレは、デイヴと愉快な仲間たちとの死闘を繰り広げた上に親父ともやり合って気分が昂ってたところに、痛み止めのハッパをキメたせいでジャンも気が大きくなってた部分があったんだろう。正気に返っちまったジャンにはもう俺とやる気はねぇんだなって、そうはっきり突き付けられて、期待に膨らんでた俺の胸とチンポは一緒に縮んじまった。あ、嘘です。チンポの方は膨らんだままだったけど。でも、明らかにやる気はねぇってジャンを相手に無理矢理盛る気にはなれなかったし、前回みたいにやりてぇってお願いして縋ることもできなかった。
仕方がないんで、それからの俺は、あの日脳裡に焼きつけたジャンのエロい格好や表情をオカズにシコシコ勤しむ日々。それで物足りなくなった時には、夜中にこっそりジャンの部屋に忍び込んで、何も知らずに寝ているジャンの寝顔をオカズにさせてもらったりもした。
だけど、ロックウェルを出てからこっち、呑気にセンズリかいてる余裕がゼロだったとは言わねぇが、そこまで多くもなかったわけで。近くで寝てるジャンの気配に悶々としながら毎晩のように股間をパンパンにしていた俺に、今のジャンは刺激が強すぎた。
「バクシー? どうしたお前、食ったモンでも詰まらせ……」
口をパクパクさせたまま言葉が出ない俺を不審に思ったらしいジャンの視線が、俺の様子を探るみたいに頭の天辺から上半身、そして下半身へと移動し。
(――あ、ヤベ、バレた……)
向かい側に座ってる連中には見えねぇだろうが、俺のすぐ隣に座ってるジャンがちょっと視線を動かせば、俺の股間がどうなってるかなんてのは一目瞭然だ。柔らかく潤んでいたジャンの蜂蜜色の瞳に、スゥッと怜悧な光が宿る。
「て・め・え・は! メシ食いながら何考えてやがった!!」
「あ、って、痛ぇってばよぅ」
連中に聞かれないようにだろう、俺にだけ聞こえるような小声で罵ったジャンは、俺の脳天に拳骨を一つ落としてから、癖の悪いあんよで俺の長い脚の脛の部分を狙ってげしげしと蹴りつけてくる。さすがにちっと痛い。だけど、そうやって俺のすぐ隣で暴れるジャンからは何とも言えねぇいい匂いが――ここ最近はまともにシャワーを浴びられてないんで、ジャン自身の体臭だろう――してきて、それがまた俺の興奮を煽るせいで、荒ぶった股間は一向に収まりそうになかった。
いきなり相棒に暴力を振るい始めた自分たちの新たなるボスの姿を唖然とした表情で見ている、ジャンの下僕候補たち。そいつらが、せめて俺と同じ意味でジャンにハマることがねぇように、連中にはこれからじっくり俺とジャンの絆を見せつけてやらなきゃなるまい。そう、思ってから。
(俺とジャンの間にある絆って、今のところは背中を預けるに足る相棒ってだけじゃないのけ?)
後は、無理矢理レイプしたことがあって――って蒸し返したらむしろ絆に綻びが入る感じかコレ。それから、一度だけ合意でセックスしてもらったことがある……お情けで。そんな現実に思い至ってちょっぴり涙が出そうになる。
「なーあ、ジャァン、ごめんってヴァ」
おめーが俺以外の人間のモンになったら、俺は多分そいつを殺しちまう。そいつが俺たちの味方だろうが敵だろうが、決して殺しちゃならねぇと親父に厳命されている相手であろうが、お構いなしに。
「赦してくれよぅ」
お前を諦めきれねぇ、俺を。