事後の余韻を引きずる荒い息を吐き出しながら、ベッドの上で膝立ちになろうとした俺だったが。思っていた以上に力の入らなかった脚が体重を支えきれず、上半身が大きく右によろめいた。
「お――っとォ。セーフ」
背後にいたバクシーが慌てたように長い腕を伸ばし、危なげなく俺の身体をキャッチして支えてくれる。その腕に縋りながら俺はもう一度脚に力を込め、ゆっくりと身体を持ち上げた。
動きに合わせてずるずるとバクシーのデカチンが引き出されていく。時間をかけて亀頭の部分まで吐き出したところで、ごぷり、とでも形容したくなるような音を立てて俺の中から大量の粘液が溢れ出してきた。抜け出ていったバクシーのチンコの後を追いかけ、縋っているような有様のそれは、野郎が俺の中に思う様ぶち撒けたザーメンで。その余りの量の多さに、毎度のことながら呆れと感心が同時にやって来る。
「カッツォ、アホな犬みてぇに盛りやがってバクシーこの野郎馬鹿野郎……ケツの穴が擦れて痛ェわい」
「ごめぇん、いや、ホントに悪いと思ってるんだってヴァ」
本気で謝っているようには全く感じられない――そもそも、俺自身も本気で不満を訴えてるわけじゃない――バクシーの軽口を背中で受け止めながら、俺は自分の脚の間を見下ろした。そこには勢いを失うことなく変わらずに隆々とした勃起状態を保ち続けたままのバクシーのチンコが聳え立っている。今もなお、俺のケツを狙っているかのようなその凶器を見下ろして、俺はため息を――そう呼ぶには些か熱の籠り過ぎちまっている熱い吐息を吐き出した。
「しかもこんだけぶち撒けておいてまーだガチガチに硬ェとか……オメェのチンコはどうなってんだよ」
「あぁんごめんねぇ、俺のラヴァーズが魅惑的すぎ問題」
ちゅ、ちゅ、と。図体に似つかわしくない可愛いリップ音を立てながら、バクシーが俺の背中の真ん中に戯れるように幾度もキスをする。それから、かろうじて両腕に引っかかっているような状態だった俺のシャツを肩へと着せかけてきた。ついさっき、セックスをおっぱじめる際にうっかり引き裂きそうな勢いで脱がせやがった野郎と同じ人間だとは思えないぐらいの、やけに紳士めいた仕種が却って滑稽に感じられる。
「でもでも、ジャンにこれ以上無理はさせらんねェから後は自分でシコッて処理するんで」
「キリッ! ……じゃねぇよ。ったく……」
肩越しに振り返った俺を見つめるバクシーの、わざとらしく真面目くさった表情に向けてぼやきながら、俺は潤滑剤と精液にまみれた逞しい勃起に右腕を伸ばし。ぬるつくその表面――裏筋を指先で擽るようにするりと撫で下ろした。
「オッ? お、おッ」
「俺の責任だっつーなら、俺が最後まで面倒みてやるっての」
「えぇぇェ~、いいのォ?」
期待に満ちた嬉しそうな声が鼓膜を打つのににんまり微笑んで、俺は野郎の太い――片方だけで俺の胴体ぐらいありそうな太腿に尻を下ろした。両脚の間からにょっきり生えたバクシーのデカチンの上に自分のチンコを重ね合わせ、二本纏めて擦ってみる。
「んっふふ~」
背後から俺の上半身に腕を回したバクシーが、鼻から抜けるような、吐息とも歌声ともつかない嬉しげな声を漏らして背中に抱きついてきた。自分以外の男と生身のチンコが擦れ合うとか、他の野郎が相手だったら鳥肌もんの最低な状況だってのに。相手が恋人だというその一点だけで、俺たちは二人とも興奮した熱い息を吐き出して。バクシーはただでさえ凶悪な勃起を、より一層ガチガチに硬くさせちまって、いた。
「あー、俺のチンポの根元にジャンのタマが擦れて、コレ、めっちゃ気色いいわぁ……」
もどかしそうに腰を揺らしたバクシーの股間が俺のタマを押し上げて。気色いい、という言葉と同時に俺の手の中で野郎の亀頭が更に大きく漲るのが手応えで分かった。バクシーのその反応に、俺はチンポを挟み込んだ太腿を反射的にギュッと締め付けちまう。
「あー、太腿の感触もたまんねぇ。ジャンの身体はどこも気持ちいいしすべすべだしいい匂いもするし……最高だわ」
背後から俺の項に埋めるように鼻先を擦りつけてきたバクシーが、そこで大きく息を吸い込む音がする。擽ったさを覚えるのと同時に腰の辺りにぞわりとした感覚が走って、俺は思わず腰を揺らし。釣られたように、バクシーのチンコを扱く手の動きが速まった。
「あー、やべ、ジャンに擦られてると自分でするより百倍イイ……」
「何だよ、もうイッちまいそうなのか?」
「ん……ジャンは?」
「カーヴォロ、俺はもう出すモンなんざねぇわい」
辛うじて勃起はしているが、俺のタマ袋は既に空っぽだ。さっきまでのセックスでも後半は脳イキとメスイキしかしていない。そうして散々搾り取ってやったからには、バクシーの方もそろそろ打ち止めが近いはずだった。今日は――今日も、だろうか――限界まで搾り尽くしてやろうと決めたからには、手を抜くつもりはない。気合いを入れてバクシーのチンコを握り直した、その時だった。
「ナァ、ジャァンがもうザーメン出せねぇのは分かったけどよぅ」
俺の項から顔を離したバクシーが、左耳の裏へ唇を押し当ててくる。熱い舌がべろりとそこを舐め上げてから、痕を残さないようにだろう、ごく弱い力でやわやわと吸い付いてきて。
「ん、っ……」
弱火でじりじりと炙るような快感に声を漏らしながら腰を震わせちまった俺の耳に、バクシーが甘えたような声を注ぎ込む。
「やっぱ俺のチンポ、ジャンのと一緒に扱いてくれよぅ。な? な?」
普通に考えれば、他の野郎のチンコと纏めて扱かれるより、自分の竿だけ扱いてもらった方が気持ちいいはずだ。それなのにバクシーの野郎は、俺のモノと一緒に扱いてくれと甘えた口調で強請ってくる。その理由なんて一つしかあるはずがなくて。俺は、快感以外の理由でも熱くなっちまってる吐息を口から吐き出した。
「ったく、この甘えた坊やはほんっとしょうがねぇなぁ」
耳に届く自分の声がどうしようもないほどに甘ったるくドロドロに蕩けているのが分かって、しょうがねぇのはどっちだよ、と内心で自分を罵る羽目になる。軽く歯を吸うようにして舌打ちを鳴らし、二本の竿を両手で纏めるようにして掴んで。バクシーの先端からだらだらと溢れ出ている大量のカウパーを互いのチンコに刷り込むようにしながら手を上下させると、背後から俺を抱きすくめているバクシーが気持ちよさそうな熱い吐息を漏らした。その反応に気を良くして、自分たちのモノを擦る手に一層気合いが入っちまうんだから俺も大概頭がどうかしている。
「あぁ、ジャン、ジャンのお手々もチンポも気持ちいい、たまんねぇよぅ」
俺の尻を乗っけてるバクシーの太腿に力が籠った。込み上げてくる快感を必死に堪えているんだろうことが、ケツに直に触れている筋肉の感触で分かっちまう。バクシーの野郎はじっとしていられなくなっちまったのか、耐えかねたようにへこへこと腰をかくつかせて。その有様に俺は笑い混じりの吐息を漏らした。
「カーヴォロ、まんま犬じゃねぇかよ」
「だって、だってよぅ、もう、出ちまいそうで――ッ」
バクシーを言葉で嬲りながら、粘液でぬめる掌でカリ首回りを刺激してやると、背後で切羽詰まったような声が上がった。その声の響きに、出すもんなんてとうに無いはずの俺のチンコがビクリと反応しちまう。それすらも刺激になったのか、バクシーの先端からは新たなカウパー腺液がどぶりと溢れ出して、俺の手と俺たちの竿を濡らしていく。
「あぁ、ジャン、ジャン……」
「なぁ、出しちまえよ。我慢なんてしなくていいから。な?」
囁くように、宥めるように。そう言いながら手の中の二本の竿を扱き続ける。俺の首筋に舌を這わせるバクシーの吐息が、ひどく熱い。時折、舐め回す舌に紛れて鋭い犬歯の感触が皮膚に触れるのが分かる。俺に噛みつきたいのを必死に堪えているんだろうと思うと、愛しさと――興奮を覚えて堪らない気持ちになった。
「――ッ!!」
俺の手の中でどんどんと硬さを増していく互いの勃起。その硬さが最高潮になったと感じた次の瞬間、バクシーが俺の左の肩に額を擦りつけてきて。低く喉を鳴らすような、押し殺した呻き声を漏らした。掌の中の勃起が、握り締める俺の手に反発するみたいに大きく膨れ上がって脈打ったかと思うと。次の瞬間には、バクシーの勃起の先端から熱い精液が溢れ出す。
「カッツォ、まーだこんな溜め込んでやがったのかよ」
勢いも量もいつもみたいな放尿レベルには及ばないとはいえ、ここまでにこなした回数を考えれば充分すぎるほどに大量のザーメンに、俺は感心するやら呆れるやら。
「ジャン、ジャン…………」
長い腕で背後から縋るように抱きついているバクシーは、甘えた声で俺の名を繰り返し呼びながら後頭部や項に鼻先を擦りつけてくる。その姿がどうしようもなく可愛く思えて、俺は野郎の亀頭を宥めるような手つきでよしよしと撫でてやった。
限界近くまで吐き出させてやったはずのバクシーのチンコは流石に半勃ち状態にまで萎えている。それでも、その横に並ぶ、未だ勃起状態の俺のモンよりデカいってのは一体どうなってんだ。なんてことを思いながら亀頭を撫でていると、バクシーがむずかるような声を上げて腰を揺らした。
恐らくは達したばかりのチンコへの刺激が強すぎるんだろう。イッた直後に亀頭を刺激された際の痛いような痺れるようなビリビリとした感覚は、俺自身にも覚えがある。だが、俺と違ってバクシーは「つらい」とか「やめろ」みたいな具体的な言葉を発したりはしなかった。背後から漏れ聞こえる声の調子からすると、気持ちいいからやめてほしくない、というのとは違う気がする。
(多分、俺によしよしされてんのが嬉しいんだろうな)
強すぎる刺激に耐えてでも、俺に褒められていたい。なんてのは言葉にしちまうと馬鹿みたいな理由だが、外してはいない自信がある。
「よしよし、いっぱい出せていい子だなァ、バクシー」
「――――、ふぅ――ッ」
試しに、指を反らして硬くなった掌で強めに亀頭を撫でながら褒め言葉を口にしてみる。そうすれば予想を裏切ることなく、嬉しげな吐息混じりの喘ぎ声が聞こえてきて。俺の胴体に巻きついた腕にギュッと力が込められた。チラリと肩越しに視線を投げれば、涙で潤んだ銀の双眸に――俺が好きだと、俺に褒められて嬉しいと訴えてくる熱い視線にぶち抜かれる。
(ああクソ、可愛い――可愛いな)
興奮に駆り立てられ、ぬめるザーメンをチンコの天辺に塗り広げるみたいにしながら手の中の亀頭を左右に擦りたてれば、バクシーの馬鹿ちんこは息を吹き返したみたいにまたデカくなった。
「ぅ、っ――じゃ、ぁん……」
食い縛った真っ白な歯の隙間からフゥ、フゥ、という苦し気な熱い吐息が漏れて俺の肌を打つ。情けなく眉をひそめたその表情がどうしようもなく可愛くて、もう出るもんなんて何もねぇと思っていた俺のチンコからも涎が垂れ落ちてきた。
「どうしたよ、バクシー?」
「何か、出そう――ッ」
「まーた出そうなのか? どんだけ出るんだよ」
「違う、何つーか、ザーメンじゃなくってぇ」
言われて、ああ、と思い至る。ションベンだか潮だか知らねえが、そっちの方が出そうだってことだろう。
「何だっていいぜ、出しちまえよ」
「――ッ、出したら、ジャン、呆れねぇ? 俺にがっかりしたり、しねぇ?」
必死に訴えかけてくる言葉に。泣きそうに歪んだ表情に。俺のシャツをギュッと握り締めた縋るような手つきに。信じられないほど興奮させられた。この野郎は、俺に醜態を晒すことよりも、それを俺にどう思われるかってことの方が気になるのかよ。これまでにも散々お互いに醜態を晒し合ってきて、何だったら俺の方がよっぽどひでぇツラだの有様だのを披露してる自信があるってのに。それなのに、そんな可愛いことを言いやがって、一体俺をどうしてぇんだよお前は。
「今さら何言ってやがんだこの馬鹿ちんこ」
自分が興奮にどろりと蕩けた目つきになっちまってるのが、分かる。多分、覗き込めば奥に濃いピンクのハートマークが浮かんでいるに違いないその目で、バクシーの顔を覗き込みながら。ゆっくりと優しく、悪魔が処女をたぶらかすような口調で囁いてやった。
「どんなお前だって愛してる。――愛して、やるよ」
泣き出す寸前、みたいなツラをしていたバクシーの顔が一瞬呆けたようになって。俺の尻の下で野郎の太腿の筋肉が不規則にびくつくのが伝わってくる。
「ア、やべェ、出る、出ちまう……ッ」
俺の左肩に額を擦りつけるようにして低く吠えたバクシーは、ぶるりと大きく身体を震わせる。次の瞬間、野郎の勃起からは小便とも精液とも違う透明な体液が噴き出して俺の掌を濡らした。
「っ、ジャン、好き、好きだ――ジャン、ジャン……」
俺の肩に顔を伏せたまま、そういう装置みたいに、ひたすら俺の名前とアイラブユーを繰り返す。その間も、バクシーのチンコからは断続的にびゅく、びゅく、と透明の体液が噴き出していて。
「ファック……止まんねぇ……どうなってんだ……」
そう言って顔を上げたバクシーは、快感の余韻に放心してるような。それでいて、初めての経験に不安を覚えて途方に暮れているような。そんな、何とも言えない表情で見つめられた俺は庇護欲と嗜虐心を同時に刺激されちまって。
(カッツォ、クソ、可愛すぎんだろうが……!)
何も出るはずのない自分のチンコをびくつかせながら、頭の中が真っ白になるような快感を味わって、いた。