押し倒したバクシーの腹の上に乗っかって、上から覆いかぶさるみたいにキスをして。甘い塊を互いの口の中で行ったり来たりさせているうちに、二つ目のチョコも溶けてなくなっちまった。口の中で揮発した度数の高い酒の芳香が鼻の粘膜をくすぐる。大した量じゃないはずなのに、俺まで酔っちまいそうな気分になってきた。多分キスに夢中になりすぎて酸素が足りなくなってるせいもあるんだろう。
「ん、は――」
離した唇の間で、チョコで粘度の高まった唾液が架け橋を作り――重みに耐えかねて切れた。バクシーの口の端に落ちたそれを舌でべろりと舐め取ってやりながら、野郎の股間に手を伸ばす。酔っ払って使いもんにならないんじゃないかという一抹の不安を裏切って、そこはちゃんと勃起していた。まぁ、いつもよりは多少大人しいかな、って感じの勃ち具合ではあるが。爪の背で優しく撫でてやると、腹の上に載せた俺を持ち上げるみたいにしてバクシーの腰が浮き上がる。
「っ、ジャン――ッ」
「ハハ、いーこ」
バクシーの腹を跨いで膝立ちになった俺は、酔いに潤んだ目でこっちを見上げるバクシーに見せつけるみたいにしてズボンのファスナーを下ろした。とっくの昔にガン勃ちしちまってた勃起にジッパーが引っかかって、どんだけ興奮してんだか、とてめぇに突っ込みながら前を寛げる。パンツとズボンをまとめて太腿の半ばくらいまで摺り下ろして――あぁ、パンツにでっけぇシミができちまってる。ケツがギリギリ隠れる程度の着丈のシャツの裾を引っ張れば、辛うじて股間が覆えた、そんな状態で。
「なぁ、バクシー……俺のここ、見てぇ?」
「ウン、み、見てぇ……」
ハァハァと息を荒らげながら俺に向けて伸ばされる腕の動きは、いつもと違ってキレがなかった。酔っ払って思うように動かない身体が自分でも不思議なのだろう、戸惑ったような表情が何だかひどく稚くて――悪いことをしている気分だ、と思った瞬間、チンコの先からこぷりと先走りが溢れてそこを覆っていたシャツが濡れたのが分かる。
「ガキみてぇ。可愛いじゃねぇかよ、バクシー」
あぁクソ、俺まで酔っ払ってるような気分だ。口の中に湧き上がる唾液を何度も飲み下して、俺はシャツの前を全開にした。涎を垂らした自分の勃起に手を添えて、臍まで反り返ったそいつを宥めるようにして下の方を向かせて。親指と人差し指で作った輪で根元から先端へと扱けば、鈴口からは更に大量のカウパーが溢れ出してバクシーの腹の上へと糸を引きながら零れ落ちる。
鍛えられた腹筋の溝を伝い、腹の一番へこんだ部分――臍に溜まったその液体に、バクシーが指でなぞるように触れる。濡れた人差し指と中指を不思議そうに眺めてから、もたもたと口に運んで。
「ジャンの味が、する――」
俺の先走りに濡れた指を舐めしゃぶったバクシーは、とろりと甘く蕩けたような目をして、そう言った。その瞬間腹の奥がどうしようもなく疼いて、バクシーの熱を欲しがったケツの穴が物欲しげに口を開いて涎を――仕込んでおいたオイルを垂らした。
「やべぇな……我慢できねぇ」
いつものやりたくて突っ込みたくてしょうがねぇ、って感じのバクシーとは明らかに違う。勃起はしてるが、セックスするよりもただ触れ合ったり甘えたりしていたいんじゃねぇかなって雰囲気だ。今日はこいつの誕生日なんだし、そういうのがいいならそれに付き合って甘やかしてやろうって、さっきまでは本気で思ってたんだ。
だけど、どうにも無理そうだった。太腿に引っかかってた自分のパンツとズボンを脱ぎ捨てた俺は、バクシーのズボンに手をかける。酔っているせいだろう、いつもの勃ち具合と比較すれば大人しいもんだが、それでもガン勃ちの俺のモンよりよっぽどでけぇってのはどういうわけだ。
「バクシー、これ、脱がしてやるから。協力できるよな?」
「あ、あぁ……」
子供に言い含めるような口調で言ってやると、素直に応じて脱がせやすいように腰を持ち上げてくれる。動きは鈍いが、力が入らないってことはないようだな、なんて考えながらズボンとパンツをまとめて引き下ろして。顔を見せた毒蛇の頭は少しだけ湿ってて、さっきチョコを食わせる前にバクシーが漏らしてたであろう先走りの名残を残していた。両手で竿を包み込むように支えながら、大きく開けた口の中に迎え入れる。
「ん、く、……あ、ジャ、あン――ッ」
むずかるような声を上げながら腰を揺らめかせるバクシーが、よがってんのか嫌がってんのかは正直判断が難しい。だけど例え嫌がってるんだとしても、俺の方が止まれそうになかった。亀頭を口に含んで舐めしゃぶってると、口の中いっぱいにバクシーの味と匂いが広がる。他人からすれば決して好ましいもんじゃないだろうが、俺にとっては馬鹿みたいに興奮を煽られる、それ。その匂いに釣られて条件反射みたいに湧いてきた唾液をだらだらと竿に伝わらせて、舌だけじゃなく掌も使って根元の方まで塗り広げていく。
「あ、ジャン、ジャン、何か出そう――ッ」
「出すなら俺の中で、だぜ、バクシー」
切羽詰まった声に舌と手を止めてそう言い含めると、本当に泣いちまうんじゃないかってくらいに潤んだ目が切なげに俺を見て視線を揺らめかせる。何だこの可愛い生き物。本当にバクシーなのか。いつものこいつなら、とっくに起き上がって俺を押し倒して入れさせてくれって懇願してるところだろうに。
口の周りを濡らす唾液をシャツの袖で拭いながら、クッソ可愛い表情をした恋人の顔を膝立ちの体勢で見下ろして。股間から別の生き物みたいに生えてる棍棒のような切っ先の上に跨ると、左手でそいつを支えながら、右の手で自分のケツの穴を開いた俺は。ゆっくりと腰を下ろした。
「あ、あ……、あぅ……」
「ハッ、いっつもよりは小せぇけど……やっぱ――デケェもんはデケェわ……」
みしみしと俺の中を埋め尽くしていく圧迫感は、多少の大きさの違いがあってもそう変わりはなかった。待ち望んでいたモノを出迎えた俺の中が、歓喜に震えてそいつを食い締めて歓迎する。それに呼応するみたいにバクシーの勃起も俺の中でどんどんと質量を増していく。内から内臓を押し広げられる感覚に鳥肌が立った――もちろん、快感で、だ。
前後にゆっくりと揺らす尻に触れる、あったかい人肌とサリサリとした陰毛の感触。いつの間にか根元まで咥え込んでたことに気づいて、俺は腹の奥から息を吐き出した。
「あー…………たまんねぇ……」
組み敷いた逞しい腹筋を掌で撫でながらため息交じりにそう言うと、バクシーの顔が赤く――元々酔いのせいで赤く染まっていたが、それよりも更に――血を上らせるのが分かった。
「バークシー、気持ちいーか?」
声が出ねぇのか、無言で首を縦に振って応じるその必死さがいじらしくも可愛らしい。
「可愛いなぁ……俺のことが好きで好きでたまんねぇって顔してら、ハハッ」
我ながら甘ったるい声が出た。人のことを言えたもんじゃねぇ、多分、俺だってバクシーが好きで好きでたまんねぇって顔をしてるんだろう。でも、ここには俺たちしかいないんだからそれで何の問題もなかった。
上体を倒して覆いかぶさり、間近から視線を合わせる。相変わらず酔いに蕩けた視線は、それでも最初の頃よりはしっかりと俺に焦点を合わせているみたいだった。薄っすら開いた唇に、ちゅ、ちゅ、と表面を触れ合わせるだけのバードキスを繰り返す。そうしているうちにもどかしくなったのか、バクシーが舌を出して俺の唇を舐め始めた。さっきと変わらない、ミルクを舐める子猫みたいな舌使いが逆にエロく感じてきちまうのは何でだろう。
「可愛いな。可愛い、バクシー……」
俺の唇を舐める舌を捕まえて口の中に引き込んで、さっきこいつのチンコにしてやったみたいにベロベロ舐め回してやりながら腰をゆっくりと揺する。そうしてやると、腹の中でバクシーの凶悪な勃起が跳ね回るのが伝わってきた。
「ん、ふ、じゅる、――ッ、ジャ、ンん……」
「んー?」
何かを言おうとしている様子に唇を離してやるが、それ以上は言葉が続かないようでバクシーは唇を数回震わせた後、熱い吐息を吐き出した。切羽詰まったような表情なのは、決定的な快感には一歩手が届かないせいなのか。そのくせ、乱れて目の上にかかった前髪を払うように梳いてやれば、一転して嬉しそうな表情になる。可愛い、可愛い――たまんねぇ。
「なぁバクシー、お前のキンタマの中身、全部俺の中に出しちまえよ。できるだろ?」
バクシーの野郎は健気にコクコクと頷きを返してくるが、できないと言われたところで搾り取るだけなんだから、やることは一緒だった。膝立ちの体勢から踵を床につけてしゃがみ込み、腕を後ろに突いて上半身を反らせる。結合部を相手に見せつけてるみたいな格好に、注がれる視線が酔いとは違う熱を帯びるのが分かった。その視線を存分に意識しながら腰を上下させると、充分すぎるほどにでかくなっていたバクシーの凶器が更に体積を増していく。
「あ、あぁ、ジャ、ジャン――ッ」
バクシーの腕が俺の方に伸ばされて――躊躇うみたいに宙を彷徨ってから、結局俺に触れることなく本人の身体の脇に下ろされる。その瞬間、理解した。こいつは、怖くて俺に触れられねぇんだ。多分、酔っ払って力加減が分からなくなってるせいなんだろう。酔いで動きが鈍くなってると思ってたのは俺の勘違いで、もしかしたら、ずっと俺に触れたいのを我慢して挙動がおかしかったのかもしれねぇ、そう、思い至って。
「カーヴォロ……」
そういやまだ俺とのセックスに慣れてなかった頃は、気をつけないと俺のことをバラバラにしちまいそうだとか何とかよく口にしてたっけ。それに。
『俺、今ごろこうしてねえなあって。……バカなことしちまったかなあ、って――』
初めてまともにセックスをしたあの夜、カサブランカのバスルームで。俺をレイプした時のことを思い出すと身体がすくむんだって言ったバクシーの声を思い出す。多分、バクシーはあの時のことを心の底から後悔したんだろう。やられた側の俺の方は、当初こそ本気でぶっ殺してやろうと思ってたくせに、こいつと過ごすうちにそんな気持ちもすっかり薄れて。今じゃ思い出すこともなくなっちまってるっていうのに。きっとこいつの中には今もその時の後悔ってやつが根を張ってるんだろう。そう思ったら、俺は苦しいような愛しさを覚えた。
「あ、……ジャン……?」
後ろに反らしてた身体を起こして、バクシーの手に触れる。でっけぇ掌。鉤爪みたいな手指。多分こいつが本気になれば、あっさりと俺の生命を奪ってしまえる、凶器じみたそれ。
(触れよ。――って言うのは簡単、なんだけどな)
オンナノコじゃねぇんだ、ちょっとくらい乱暴にされたって壊れたりしねぇって。多少怪我したってかまわねぇから好きにしろって。言ってやるのは簡単だけど、それで本当に俺が怪我でもしたら、傷つくのはこいつなんだ。だから、こいつが触れねぇって思うんなら、その分俺から触れてやりたかった。
「搾り取ってやるから、お前は黙って寝っ転がって竿便器になってろよ」
言いながら、長い指の間に俺の指を滑り込ませて。指の股を擦るように刺激してやると、バクシーが腹筋をビクつかせながら短い喘ぎ声を上げる。
「ハハ、これ、気持ちいーよな。酒で感度が鈍ってなくて何よりだ」
「きも、ち、いい……ジャン、かわ、可愛い……」
「カーヴォロ、お前の方がよっぽど可愛いわい」
泣きそうに俺を見上げるその目つきが可愛い。涎を垂らして半開きになった無防備な唇が可愛い。恐る恐るって感じに握り返してくる臆病な手つきが可愛い。
(可愛い、可愛い――俺の、男)
バクシーを咥え込んでる身体の奥底から湧き起こってくる疼き。それに突き動かされるみたいに、上下する腰の動きがどんどんと速まっていく。下腹部が引き攣れるような感覚に自分の限界が近いことを悟って、俺は歯を食い縛った。今日は、こいつより先にいっちまう訳にはいかねぇ。だけどこうなるともう、どこに当てようがどんな風に擦られようが、気持ちいいのは変えられない。
馬鹿みたいにでっけぇバクシーの亀頭に身体の奥を拓かれて。苦しいのか気持ちいいのか分かんなかったはずが、苦しいのが気持ちいい、って思うようになっちまって。もう、こいつのじゃなきゃ満足できねぇんだろうって、そういう身体にされちまって。こいつに惚れちまう前の俺だったら冗談じゃねぇって思うようなそんな状況が満更でもねぇんだから本当にどうしようもない。
「うぁ……、ジャン……ッ」
腰から下がぐずぐずに溶けちまうんじゃないかって、そう思うような気持ちの良さに身体を震わせると、俺の下で切羽詰まったような声が上がった。
「出る、出ちまう――ッ」
「出せよ。一滴残らず俺の中に出しちまえよ、バクシー」
「――ッ、あい、してる、俺の、俺、だけの、ジャン――ッ」
きゅぅ、と、可愛らしい力で俺の手を握り締めながら、吼えるようにそう言って。俺の身体に埋め込まれたバクシーの大砲が一際でかく膨らむのが分かった。内臓を殴られてるみたいなその感触は俺にとっては紛れもない快感で。痙攣するバクシーのそれを食い締めながら、俺も自身を解放する。
「あ、あぁ……すんげー、出る……」
「ジャン、ジャぁン……好き、好きだ」
何度も何度も愛の言葉を口にするバクシーに応えるように、ゆるゆると腰を動かすと、それに引きずられるみたいに俺のチンコの先からザーメンがだらだらと零れ出る。俺の出したもんが自分の腹の上に広がっていく様子をしばらく観察していたバクシーは、徐に身を起こして、俺の鼻先に口づけた。それから、繋いだままの俺の手を口元に引き寄せて、そっちにもキスをくれる。さっきまでとは違う滑らかな動きに、俺はオタノシミの時間の終了を悟った。
「あー……酔い、醒めたのけ?」
「まだちっとふわふわしてっけど……まぁ、大体は」
「フフ、そっか。アルコール、抜けちまったか。せっかく可愛かったのになぁ」
「ひどいじぇ……抵抗できない俺を好き放題するなんて、とんだ悪党だ」
「ハハ、悪かったって」
わざとらしい被害者面におざなりな謝罪の言葉を投げつけて、下から掬い上げるようにバクシーに口づける。ゆっくりと絡ませ合った舌をお互いの口の中に行ったり来たりさせながら、握り合ったままの手をすりすりと動かして。もうチョコの味なんてどこにもしないのに、それでも甘く感じるバクシーの唾液を一頻り啜ってから、唇を離す。
「ン……こっから先はお前の好きにしていいんだぜ? まだ――できるだろ?」
「ボッッッッキしましたァ!!」
「知ってる。つーか最初っから萎えてねぇだろうが、この馬鹿チンコ」
すっかり元通りになったバクシーに組み敷かれながら、俺はテーブルの上に取り残された最後の一個の使いどころを考えたが。すぐにその思考は乱されて、溶けた。