「じゃ、ぁん…………」
自分より一回り以上も大きな男に伸し掛かられて、ジャンは地面の上に仰向けに倒れ込む。その拍子に囚人服の左肩の部分がずるりとずり落ち、鎖骨と――そこに刻まれた痕が剥き出しになった。上からジャンを見下ろす大男の目がそれを捕らえ――大きな口がニタリ、笑みの形に歪む。
「へ、へへ……」
長い手足でジャンの四肢を押さえ込み、パカリと開いた大きな口からボタボタと涎を垂らす男はジャンの肩口に頭を埋めると、剥き出しになった鎖骨に食らいついた。
「い、てェ……噛む、のはやめろって……」
「ン、じゅ……じゅぶ……はぁ…………」
抗議の声を素直に聞き入れたのか、単にそういう気が向いただけなのか、バクシーは歯を立てるのを止め。代わりに、そこに刻まれている痕をなぞるように舌を這わせる。何度も何度もそこを舐め上げられているうちに、ジャンの身体は快感を覚えて小さく乳首を勃たせていた。囚人服の上からでも分かるぐらいにはっきりと形を浮かび上がらせたその小さな隆起を見咎めて、バクシーの両の目がキュッと弓なりに細められる。その視線をまともに見てしまったジャンは、獲物を見つけた捕食者の目だ、と悟った。
「じゃあん、おい、しそ、んふ、ふ」
服の上から乳首に食らいつかれ、唾液を纏った舌で嬲られる。濡れた衣服が肌に貼り付いていく感触と、布越しに乳首を撫でていく舌の生温かくザラリとした感触に、ジャンは腰を震わせた。
「あっ、バカ、そんなん、されたら――ッ」
ジャンの意思に反し、あっという間に血を巡らせたペニスが隆起する。そこへ、上に乗っかっているバクシーが自分の股間をグイッと押し当てた。密着した状態から更にグリグリと擦るように押し付けられるバクシーのそれは、二人分の囚人服に隔てられていても感じ取れるくらいに熱く、そしてひどく硬くなっている。そのことを感じて、ジャンは羞恥と興奮で頭の中が真っ赤になるような心地になった。
「ん……じゃ、あん……じゅるるる、はぁ、はぁ」
「そこ、乳首ばっか、ダメだって、ぇ……ションベン、出そうになっからぁ……」
舌で穿り返すように執拗に衣服の上から乳首を舐め回されて、ジャンの腰がガクガクと震える。囚人服の股間の布地は双方の漏らした先走りで既に湿っていて、その濡れた布越しに互いの亀頭が擦れるのが気持ち良くて、二人とも腰が揺れるのを止められなかった。
「じゃあん……ちんちん、痛ェ……」
「ン……そのまま出しちまっていいぞ……服の中でびゅるびゅる、みっともなく無駄撃ちザーメン出しちまえよ」
「じゃ、ぁん、も、出す?」
「出す、俺も、出す、からぁ……」
「じゃあん、きす……」
「あぁ、キス、しような……」
応じた直後に噛み付くようなキスが降ってくる。ジャンの口の中に長い舌を突っ込んで、唾液を送り込みながらじゅるじゅると口内を掻き回すバクシーの必死な様子に、ジャンは思わずバクシーの後頭部に手を伸ばし。項をくすぐるように撫で上げて後頭部の髪の毛の間に指を差し入れた。首の後ろから背中を通って腰へと駆け抜けていく電流のような刺激に、二人の間に挟まれていたバクシーの性器が急激に硬く――大きくなる。その勢いと熱さに釣られるようにジャンのペニスも膨らんで。
「っ、じゃ、ぁん……ん、すき、すき……っ」
「あ、ぁ、ばく、しー――ッ」
二人は互いの呼吸を奪い合うように唇を重ね舌を絡め合ったまま、同時に精液を吐き出した。
◇ ◇ ◇
「やー……イメージプレイってのもまた新鮮な刺激がありますねぇ。めちゃめちゃ出ました」
「カッツォ。いっつもサーモンかってぐらい大量に出してる野郎が何言ってやがる……っつーか何だよこの服どっから持ってきやがった。こんな……小道具まで用意しやがって」
バクシーがお願いした直後にはアホみたいな遊びに付き合っていられるかとすげなく断ったはずが、粘り強くお願いされて根負けし、渋々頷いた後は結局ノリノリで最後まで付き合ってしまったジャンは。その恥ずかしさを誤魔化したいのが丸分かりの不機嫌そうな顔で、首から下げられたリングを指に引っ掛けて弄ぶ。
「こないだ、ムショにいた頃の夢ぇ見ちまってサァ。あン時からおめーはキラキラして可愛かったよなぁとか思ったら、あそこで手を出しておかなかったのがもったいなかったような気がしてきちまってェ」
「バァーカ、テメェは帳簿を手に入れるためにあそこにいたんだろうが。潜入中によそ見してどうすんだ」
「それに、サァ……俺たちのハジメテ、もこの格好だったわけじゃん?」
そう言ったバクシーが、こちらの表情を窺うようにチラリと視線を向けてくるのが分かって、ジャンは小さく舌を鳴らす。〝あの時〟の話題を自分から気軽に持ち出す割に、そういう時のバクシーはいつだって少しだけ不安そうな表情を見せることにジャンは密かに苛立っていた。
(もういい、っつってんのに、いつまでもいつまでも気にしやがって)
「あれをもうちょっとこう、愛のある感じの記憶で塗り替えられねぇかなァ……って……」
「――カッツォ」
くだらない、と斬って捨てるにはあまりにもバクシーの表情が真剣だったのでジャンはそれ以上の言葉を飲み込んで。
「だったら、もっときっちり最後までやろうぜ。どーせまだまだ出し足りねぇんだろ?」
そう言って、囚人服の上衣の裾を持ち上げ、その下に隠されていた下腹部の刺青を見せびらかしながら恋人を挑発する。
「――――ッッッボッッッッキしましたァー!!」
「知ってんよ――フフッ、この、バカちんこ」
(――そうだよ。そうやって発情期のバカなオス犬みてぇな顔してやがれ)
目を輝かせて飛びついてくる恋人の腕の中で満足そうな顔をして、ジャンはその逞しい身体に腕を回して抱き返した。