この絵を参考に書いたお話。ムショで虐められてジャンさんに庇ってもらう甘えたな囚人バクシーくん。

甘えっ子囚人バクシー - 2/2

3,897文字 / 約5分
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脅迫と傷害の現行犯、などという何ともチンケな罪状でムショにぶち込まれることになった。ロックウェルのギャング団の武闘派幹部、ショットガン・バクシー様ともあろう者が。ネズミみてぇに臆病なションベン臭ェ連中をちょいと優しく撫でてやったところを、見計らったみたいに現れた警察に囲まれてそのまま取っ捕まって連行された。
どう考えてもできすぎていて、こりゃ罠だろうと思った俺は拘置所に面会に来た親父にその旨を訴えた。俺が傍にいねぇ隙を狙って親父に何か仕掛けようって魂胆の奴がいるに違いない。
俺の訴えを聞いた親父はその件に関しては既に手を打ってあると頷いた。ハゲにしては珍しく手回しがいい。その調子で俺のこともここから出してくれや、ムショの臭ェ飯とか食いたくねぇわぁ、っておねだりはあっさり一蹴されたワケですが。逆にひとつ頼みごとをされる羽目になった。
俺の罪状は脅迫と傷害。これまでに殺してきた人数が立証できれば死刑待ったなしなのは火を見るよりも明らかだが、生憎と証拠を残すなんていうヘタを打つような真似はしてきてねぇ。だからこのまま裁判になってもせいぜい半年ほどのオツトメで済むだろう。収監先は恐らく、マジソン刑務所になる。
そんなようなことをポツポツと語った親父は、そのマジソン刑務所に現在収監されている男の様子を見てきてくれ、と。そう言った。
デイバンのマカロニヤクザ組織、CR:5。その下っ端構成員に〝ラッキードッグ〟とか呼ばれている男がいる。一家皆殺しの現場で一人生き残ったとかいうその男は賭け事では負け知らず、刑務所に収監されても気づけばいつの間にやら脱獄していなくなっている、という評判だけは俺も聞いたことがあった。それでついた通り名が〝ラッキードッグ〟らしいが、その野郎は本当に幸運なのかってのが俺の正直な感想だ。本当にツイてる奴なら二親揃った恵まれた家庭に育ってそうなもんだし、ムショにぶち込まれるような目にも遭ってねぇだろう、ってな。
今現在はマジソン刑務所に収監されているらしいその男の様子を見てきてくれ、って親父の言葉に俺は鼻の頭に皺を寄せて遺憾の意を表明した。よりにもよってそんな眉唾もんの犬っころに親父が興味を抱く理由がさっぱり分からなかったからだ。俺の表情を見た親父は、相変わらず表情筋の死んだような顔でひと言だけ。

『アレはアレックスの隠し子だ』

親父の真正面にいる俺がギリギリ聞き取れるくらいの小さな囁き声。その内容が意味するところを理解した瞬間、俺は自分の口角がこれ以上ないくらいに釣り上がるのを感じた。
アレックスアレッサンドロ・デル・サルト。親父にとっては忌敵らしい、CR:5のボス。女好きだという噂の割には決まった女がいるという話は一切耳に入ってきたことのないその男の、隠し子。そんなもんがいたなんて俄然面白くなってきやがった。
その犬っころを一体どうしてやればいいんだ。殺すのか。こっちの陣営に引きずり込むのか。それとも向こうの情報を引き出せばいいのか。
そんな風に考えて色めき立つ俺に。だが、親父は『何もしなくていい』としか言わなかった。ただ様子を見て、そいつがどんな人間だったかを後で教えてくれればそれだけでいい、と。
何とも中途半端な要求はどうにも親父らしくない気がしたが、逆に、この上なく親父らしいようにも思えた。いずれにせよ俺にとってはつまらないことこの上ない言い種だが、それでもまぁ。

(〝するな〟じゃねぇ、〝しなくていい〟だからナァ)

俺が何かしたいと思ったならしてもかまわねぇ。そういうこった。そう思ってほくそ笑む俺をジロリと横目で見やった親父は深いため息を吐き出した。俺の性格は嫌というほど分かっている親父のことだ、俺が今何を考えているのかについても間違いなく理解している。それでも親父はそのことについて何かを言うようなことはなく、頼んだぞ、とそれだけを口にして部屋を出ていった。面会時間はまだ残ってるっつーのにつれねぇ話だ。マァあんまり一緒の部屋にいたらハゲが伝染るかもしれねぇからな。
さて、これからどうするか。今マジソンに収監されてる連中の中に手駒として使える奴はいただろうか。親父と入れ替わりに入ってきた看守に手錠をかけられ、房に引っ立てられながら。俺は頭の中で目まぐるしく今後の算段を立て。まだ見ぬ幸運の犬っころに思いを馳せた。