イヴァン√エンド後。とある一夜の出来事。

ありえねぇ、責任取れよ!

5,012文字 / 約6分
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デイバンのマフィア、CR:5の幹部の一人であるジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテは次期カポ候補として忙しい日々を送っている。彼の同僚であり親友であり恋人であり、現在は同居人でもあるイヴァン・フィオーレはそのジャンよりも更に忙しく、シノギのためにデイバン市街を右へ左へと駆けずり回っている。ジャンが一日の仕事を終えて家に帰り着くと、既に日付が変わりそうな時間帯になっているというのにイヴァンはまだ戻っていないことが多く、そのままジャンが眠りに就くまで帰ってこないことも少なくはない。そして、朝になってジャンが目覚めた時には、既にイヴァンは出かけた後で、濡れたバスルームや使用済みのグラスなどからイヴァンが一応は帰ってきていたらしき痕跡を確認することになる。同居しているにもかかわらず、彼らは顔を合わせ、言葉を交わす機会もほとんどないという環境に置かれていた。
本日のジャンは次期カポ候補として、あまり気分の乗らない相手を接待していたためにいつもよりも帰りが遅くなってしまっていた。部屋に辿り着いた時点で疲労はピークに達しており、そのままベッドにダイブして寝てしまいたいところだったのだが、上着を脱ぎ捨てたとたん鼻をくすぐった臭いが気になって手が止まってしまう。接待をしていた相手の吸っていた葉巻と、その男が振りかけていた香水の入り混じったものが自分の全身に染みついているのだ、と気づいたジャンは顔をしかめた。風呂嫌いで自身が臭っても気にしないという大雑把な男にも、嫌いな臭いというものは存在している。ジャンにとっては今日の接待相手の葉巻と香水はどちらも嫌な臭いに分類されるものだった。どちらかといえば今日の接待相手に対して抱いた嫌悪感のせいで、彼が身に纏っていた香りさえも不快なものに感じられる、と表現した方が正確かもしれない。

(あの豚野郎の臭いをまとっておねんねなんて冗談じゃねぇや)

悪い夢でも見そうだ、と独り言つと、ジャンは疲れた身体に鞭を打って残りの服を脱ぎ捨て、バスルームに向かった。

◇ ◇ ◇

「おー、イヴァン、久しぶりー」

バスルームから出てきたジャンは、部屋の中に同居人の姿を認めて声を上げた。彼がシャワーを浴びている間に帰ってきていた同居人イヴァンは、バスタオル一枚を腰に巻いただけのジャンの姿にチラリと視線を向けると、ぶっきらぼうに小さく「おう」とだけ応じる。その目の縁がわずかに赤く色づいているのを見て取ったジャンは、こっそりと口許を緩めた。肉体的にも精神的にも親密な関係になってそれなりの時間が経過しているというのに、この年下の恋人は妙なところで純情で、ジャンとしてはそこがたまらなく可愛いと思わずにはいられない。同時に、年下とはいえ自分よりも体格の良い同性を相手にそんな風に感じてしまうことに、自嘲めいた思いも抱いてはいる。

(イヴァンが可愛いとかって俺、終わってるよなー)

同性に興味などなかったはずの己が、あれほど敬遠していたイヴァンを相手にしかも、本人には絶対に言えないが、一時は彼がCR:5を裏切るのではないかと警戒していたこともある上下まとめてバージンを捧げた上に、今や進んで脚を開いているなどと、マジソン刑務所でバカンスを楽しんでいた頃の自分に教えてやっても出来の悪いジョークだと鼻で嗤われるだけだろう、と思いながらも、今の状況を決して嫌がってはいない自身にジャンは満足していた。言葉ではなんだかんだと不満をあげつらって悪あがきをしていても、結局のところはジャンもイヴァンをかけがえのない大切な存在だと思っているのだ。

「てっきり今日も会えないかと思ってたゼ。シャワー浴びて正解だったな」

心地良いシャワーの温水に打たれている間に数回意識を失いかけたジャンは、湯船には浸かっていないにもかかわらず思いがけず長時間シャワーを浴びる羽目になっていた。その間にイヴァンが帰ってきたおかげで、彼らは実に二週間ぶりに家の中で顔を合わせることになった。イヴァンの方はジャンの寝顔ぐらいは見ていたはずだが、ジャンからしてみると自宅にいる彼の姿を見ること自体が久しぶりで、たかが二週間とはいえ懐かしくも嬉しい気分になってしまう。シノギの関係から生活が不規則でいつ帰ってくるかも分からないイヴァンを待って起きていることはできないだけに、こうして偶然タイミングが合ったことが喜ばしく、それを思うと今日の接待相手にもほんの少しだけ感謝してやってもいいかもしれないという気分になってしまう程度には、ジャンもイヴァンにいかれている。だが、イヴァンの方はといえば。

「ン、イヴァむぐッ!?」

無言のまま大股で歩み寄ってきたイヴァンに話しかけるジャンの言葉は、途中で遮られてしまう。唇を覆うように被せられたイヴァンの口が大きく開かれ、熱い舌がジャンの口内に侵入してきたかと思うと、荒々しく中をかき混ぜて歯の表面や舌の裏など、そこにある物を余さず舐め回そうと言わんばかりに動き回る。上唇と歯茎の間をなぞられた瞬間、ジャンの身体はのけぞって大きく震え、その弾みで二人の唇の間に少しだけ隙間が生じた。

「い、いきなり何しやが
「おまえが、誘ってきたんだろうが!」
「は、ハァ?」
「シャワー浴びて、準備万端なんだろ?」

熱に浮かされたような潤んだ瞳で自分を見つめるイヴァンの言葉に、ジャンは先ほどの自分の台詞が誤解を生じさせていたことに気づく。

『シャワー浴びて正解だったな』

シャワーを浴びていたおかげでイヴァンに会うことができた、という意味で口にしたそれ。しかし、イヴァンの脳内では、すぐにセックスができるから都合が良い、という意味に変換されていたことに、ジャンもようやく気づいたが、時は既に遅かった。

「すげぇ、いーい匂いがする

すり、とジャンの頬に自分の頬を寄せながら、耳許でイヴァンが低くささやく。耳朶に触れた熱い吐息の感触に身を震わせるジャンのペニスは、本人の意思に反して早くも勃ち上がりかけていた。ジャン自身もここのところは忙しくて自分で処理をする暇もなかったのだから、若くて健康な身体には精液とフラストレーションが溜め込まれている。自分が誘ったと思われているのは納得がいかないが、それも所詮はいつものこと発情モードに入ったイヴァンはジャンが何をしても〝誘われている〟と感じるらしいなので、ジャンはこのまま流されてしまうことにした。

「イヴァン、続きはベッドでな?」

目の前にある首筋に吸いつくようなキスを落としながらそうささやくと、イヴァンの体温が上がったのが洋服越しにジャンに伝わってくる。そのまま二人はイヴァンの服を脱がし合いながらベッドに移動して、冷たいシーツの上に転がった。

「ンッ、あ

淡い色の乳首に吸いつきながら、イヴァンはジャンのアヌスへと右手を伸ばした。長時間シャワーを浴びていたおかげで筋肉が解れていたのか、潤滑剤の助けもないというのに特に抵抗もなくすんなりと根元まで呑み込まれていく。自分の指を包む肉の熱さに、イヴァンは無意識にごくりと喉を鳴らしていた。浅く出し入れをしながら内壁を探る指が、小さなしこりを見つけ出す。

「ジャン
「あッ、イヴァン、そ、そこッ

熱い息とともに相手の名前を吐き出しながら探り当てたそこを強く押し上げると、ジャンの口から感に堪えない、といった風情の嬌声が上がった。いつの間にか完勃ち状態になっていたペニスの先端から透明な液体が大量に溢れ出し、ジャンの腹の上に糸を引いて垂れていく様がイヴァンの視界に焼きつけられる。

「エロいな、クソ

イヴァンは低く呻いてジャンの乳首から唇を離すと、ぬめるカウパーを掌で亀頭になすりつけるようにジャンのペニスを左手で掴み、無造作に上下にしごいた。性感を高められたジャンの身体は、少々乱雑なその動きに却って快感を煽られるらしく、アヌスに指を挿し込むイヴァンの手首の上で睾丸がきゅ、と収縮する。

「このまま一回、いかせてやるよ」

すぐにでも押し入りたい気持を抑えてそんなことを口走ってしまったのは、久しぶりに見るジャンの痴態があまりにも扇情的だったためだった。ジャンの中に挿れてしまうと、イヴァン自身も快感と興奮とで頭の中が真っ白になって我を忘れてしまい、ジャンの乱れる様を楽しむだけの余裕はなくなってしまう。久しぶりだからこそ早く繋がりたいという欲望と、この先またしばらくは巡ってこないであろうせっかくの機会を存分に楽しみたいという欲求とを秤にかけた結果、ジャンの達する顔をじっくりと眺めさせてもらおう、という結論に至ったのだ。

「いいイキ顔、見せてくれよな」

(一人でマスかく時のネタにもなるしよ

ジャンに知られたら怒鳴られそうなことを考えながら、イヴァンは性急にジャンのペニスを握る手を動かす。アヌスに入れた指はいつの間にか三本にまで増やされ、中指で腸壁のしこりをマッサージしながら人差し指と薬指で入り口を開閉させて、その後の準備にも余念がない。そのまま上体を倒して、胸筋の上で硬く尖った小さな乳首を舌で押し潰すように舐めると、イヴァンの掌の中でジャンのペニスが大きく膨れあがった。握りしめるイヴァンの手を跳ね飛ばそうとでもいうかのようなその反発に、イヴァンはジャンの限界が近いことを悟る。

「あ、イヴァ、ン、んッ、も、もう
「いいぜ、いけよ」

乳首から口を離すと、ジャンの顔を上から見下ろしてイヴァンが獰猛に笑う。ジャンの痴態を余さず見届けようとするその表情には、しかし観察者としての冷静さなど微塵もない。どちらかといえばこちらが弱みを見せたらその瞬間に飛びかかってきて頭から喰らい尽くしてしまおうと隙を窺っている肉食獣のようでそこが興奮する、と思ってしまったジャンは、自分の想像に笑いたくなった。

喰われちゃいたい、なんて、俺は女かっつーの

だが、どんなに皮肉ってみせたところで、自分を見つめるイヴァンの視線に籠もる熱にどうしようもなく煽られてしまう事実は変えられない。張り詰めたイヴァンの性器が臍につくほど反り返って脈打ち、ジャンが声を上げるたびにそれに合わせるようにビクビクと痙攣するのを目にしたとたん、ジャンの胸の中には言いようのない感情が溢れ出し、同時に下腹部の奥で快感が弾け飛んだ。

「あ、も、イくッ」

久しぶりに放出された精液はねっとりとした濃度で、飛距離を伸ばせなかった代わりに量で勝負をしようとでもいうかのように幾度もジャンのペニスを震わせる。

「ヘッ、大量に出しやがって。そんなに気持ち良かったのかよ」

泣き出す寸前のようにせっぱつまって瞳を潤ませ、顔を歪めてオーガズムを迎えたジャンの表情を網膜にしっかりと焼きつけたイヴァンは、満足そうな声でジャンを揶揄する。だが、いつもであればそれに対する反論を投げ返してくるはずのジャンが、何故か今日はおとなしい。イヴァンは嫌な予感を覚え、恋人の名を呼んだ。

「ジャン?」
ぐぅぅぅー

返ってきたのは、健やかな寝息と小さないびきだった。絶頂を迎えたジャンが、そのまま睡魔に誘惑されて眠りの世界へ旅立ってしまったのだ、と気づいたイヴァンの口からは悲痛な叫びが飛び出す。

「って、マジかよ!? おい、ジャン!?」

飛びつくように両肩に手を置いてがくがくと揺さぶってみても、既に疲労の限界を超えていたらしいジャンはわずらわしそうに眉を寄せるばかりで起きる気配はない。

「オイ、俺のコレはどーすんだよ!? ありえねぇ、責任、取りやがれ!!!」

一向に萎える気配もなく勃起したままの自分のペニスを握りしめ、イヴァンはファックだシットだと叫び立てるが、意識のない恋人はまったく反応しなかった。

「ファックなんでこんな目にクソ!」

拗ねたようにジャンに背を向けると、ベッドの端に腰かけた体勢でイヴァンは自分のペニスを改めて握り直した。目を閉じると先ほどのジャンの痴態を脳裏に思い浮かべながら、規則正しく手を上下に動かしていく。

(こんなに早くズリネタに使うことになるなんてよ

なんだか泣いてしまいそうだ、と思いながら、ヘタレな俺様はみじめな自家発電に勤しんだ。これ以降、イヴァンの前戯の時間が以前にも増して短くなったかどうかは、ジャンだけが知っている。