デイバン編では既に彼氏面をしていたバクシーは、いつ頃ジャンさんの気持ちに確信を持ったのかな、を妄想してみた話。

029:気づかなかったふりで手を出してしまおうか

2,056文字 / 約3分
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ジャンは快楽に弱い、と思う。口では散々文句を垂れる割に、触れればあっさりと陥落して脚を開く。ジャンをレイプして、母親の形見だったという金のリングを奪い取って、終いには殺しかけちまったような俺が相手だっていうのに、だ。
ムショで見かけた時のジャンは今よりももっと甘っちょろい印象だったが。殺すと決めた相手の命を奪うのに躊躇いがない思い切りの良さと。あの親父相手に殴り合いを挑んで一歩も退こうとしない、いっそ無謀なぐらいのプライドの高さを持ち合わせてるってことを今の俺は知っている。
親父のデタラメなフィジカルの強さは二、三回も打ち合えばすぐに分かる。ジャンだってきっと、勝てる相手じゃねぇってのはすぐに悟ったはずだろう。それでもジャンの奴は自力で立てなくなるぐらいにぶちのめされるまで親父に食らいついた。多分、あの小さな身体にぎっちり詰め込まれてる意地とか矜持とか、そんなもんに支えられて。
そんな男が、だ。自分のプライドをこれ以上ないくらいに最悪の形で踏みにじった男のチンポを受け入れて嬌声上げて中にザーメン出されて絶頂してみせるっていうのは、どういう心境なのか。

(身体に刻まれた快楽に抗えなくて開き直っちまったのか

気持ちいいのが嫌いな男なんていませんよね、分かります。ジャンとやりてぇっつーか、今となってはジャンとしかやりたくねぇ俺としては、快楽に弱いジャンの体質はこの上なく好都合だった。
あるいは、ジャンを前にした時の俺が自分でも情けないくらいに惨めな様子なのがジャンの同情を買ってるってのもあるかもしれねぇ。ジャンを誘う時の俺のやり口といったら、年上の女を誘う十代のガキだってもう少し上手くやれるんじゃねぇのかと思うような拙さだ。そんな俺に対して、ジャンはいつでも「仕方ねぇなあ」と書いてある顔で最終的には受け入れてくれる。
ジャンが俺と寝ている理由は、俺がジャンに与える快楽を気に入ってくれてるからってのもあるとは思うが。根本的に優しいんだろうなぁ、とも思う。以前の俺はそれを甘いと評価していたが、そうじゃねぇ。腹を決めた人間の懐の広さみてぇなもんがジャンの根底にはあって、その強さゆえの優しさみたいなもんで俺みてぇな奴まで受け入れちまう。
だから、もしかすると、俺以外の男にレイプされたとしても。そいつに縋られたらこんな風に受け入れちまうのかなって。快楽に貪欲なジャンの身体のポテンシャルといったらそりゃもう半端ねぇ。オンナ役は俺としたっつーか、俺が無理やり犯った、アレが初めてだったって言ってたのに、二回目にやった時には慣れた娼婦みてぇにめちゃめちゃエロい感じで煽られたし。今となっては、俺の馬鹿みたいにでっけぇチンポを奥の奥まで銜え込んで射精もしないで絶頂することもできるし。そんなジャンだから、他の男に抱かれてもやっぱり気持ちよくなっちまうんじゃねぇのか。そうなったら、気持ち良かったからまぁいいか、なんて、あの良くも悪くも大らかな性格で受け入れちまうんじゃねぇだろうか。
情けない俺に同情して抱かせてくれてるうちに、俺のチンポが気に入ってくれたんかな。もしも他の男にやられちまって、そいつのチンポの方がよくなっちまったらどうしよう。もっともっと頑張れば、俺以外の男のチンポじゃ満足できねぇような身体にしちまえるだろうか。それとも、逆にチンポなしじゃいられなくなって誰のでもいいから欲しいって思うようになっちまうだろうか。

そんなことを考えたりもしてたんだけど、よぅ

ジャンの口の中にぶち撒けた俺のザーメンを、ごくりと飲み下したジャンの喉仏の動きに、表情に。俺は興奮しつつも動揺して。
俺はジャンのをしゃぶるし、出されれば飲む。それ自体が気持ちいいわけじゃないが、俺のすることで気持ちよくなってるジャンの姿を見てると、自分がされてるみてぇに興奮してアタマが気持ちよくなっちまう。それはきっと、俺がジャンのことをだからで。
そして、今のジャンはといえば。やっぱり、自分がしゃぶられてるみてぇに気持ちよさそうな顔をして俺のチンポに残ったザーメンを絞り出すように舐めていた。
よく考えたらっつーか、考えるまでもなくっつーか。プライドの高いこいつが、いくら快楽に弱くたって何とも思ってない男のチンポを突っ込まれるのをまして、それを舐めたりしゃぶったりあまつさえザーメンを飲むなんてことを許容するはずがなかったんだ。

(それはつまり。ジャンも、俺と同じ気持ちなんじゃねぇのかなって)

その可能性に気づいちまった俺は。まだ自覚のなさそうなジャンにそれを指摘していいもんなのか。それとも、ジャンが自覚できるようになるまでは気づかなかったふりを貫いて、今はこのままいつも通りに抱いちまった方がいいのか。
多分、今の俺は人生史上最大の悩みを抱えている。これまでの経験は何一つ役に立たないし、誰も俺に正解をくれたりはしない。

(いったい、どうすりゃいいんだ

心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花