ロックウェルのあちこちに設けているヤサの一つで恋人としっぽりとした時間を過ごして外に出たジャンカルロは、何気なく空を見上げた。そこに点在する無数の輝きに、いつの間にやら夜もすっかり深まっていたらしいことを知ったジャンが抱いたのは、デイバンよりもずいぶんと星が多いんだな、という感想だった。
「あー、生きてる街灯がほぼねぇから、ってことか……」
目抜き通りですらまともに機能している街灯は二割を切る勢いなのだから、街外れともなれば推して知るべしであろう。地上からの明かりが少なければ、その分夜空の星の輝きが見えやすくなるのが道理というわけか、と。納得するジャンの背中に、彼に追随する形で外に出てきた男が声をかける。
「何の話だァ?」
夜空を見上げるジャンの視線を遮るように、頭上から覗き込んでくる男の顔。視界いっぱいに逆さまに映し出された愛しい男のそれ。まるでジャンの視線すら独占したいとでも言っているかのような振る舞いに、胸の奥の柔らかい部分を引っ掻かれたような気分になったジャンはやんわりと目を細めて微笑んだ。
「こんなに綺麗な星空が拝めるんだったら、不景気も悪いことばっかじゃねぇな、って思ってサ」
一見すると星空の美しさにうっとりとしているように見えるジャンの表情。溶かした蜂蜜を流し込んで固めたような瞳に浮かぶ光は、見た者が思わず舐めたくなってしまいそうなほどに甘い。それが遠くの星などではなく目の前の恋人を愛おしんでいるからこその甘さだ、と。気づけないほど鈍くなかったバクシーは。俺ってば超ジャンに愛されちゃってるんじゃん、でもでも、俺だってジャンのこと超超超愛してるもんね、という心の声に背中を押されて。
「バクシー? ――ん、むっ」
腕を掴んで引き寄せたジャンの顔を今度は正面から見つめ直すと、そのまま唇を奪った。長い舌をねじ込んで、ほんの少しの隙間ですらも許したくないとでも言うように押しつけられる唇。その熱さに、ジャンは眩暈のような感覚を覚えてゆっくりと瞼を閉ざした。
「はー……」
ひとしきりジャンを翻弄してから、名残惜しそうに離れたバクシーの唇から、長い吐息が漏れる。射精した直後に発するものとよく似ているな、とぼんやり考えるジャンの身体を、長い腕がぎゅうっと抱きすくめた。
「道端でいちゃついてても誰にも気づかれねぇ。不景気サマサマ、だなァ」
「ソレ、何か前にも聞いたことあるやつ! ……っとに、この、バァーカ!」
不満たっぷりの口調で、その割に満面の笑みを浮かべたジャンは。恋人の後ろ髪に指を絡ませて引き寄せると、今度は自分から唇を寄せた。