2023年のバクシー誕生日祝いSS。チョコレートでキスするバクジャン。

あまいくちづけ - 1/2

9,044文字 / 約11分
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十二月二四日の夜。俺とバクシーは二人きりでカサブランカを抜け出して、ロックウェルの廃屋街にある〝いつもの場所〟を訪れていた。バクシーの誕生日を二人きりで祝うため、という名目で。まあ、有り体に言っちまえば他の人間の耳や目を気にすることなくセックスできる場所にシケ込んだ、ってことになる。

「誕生日おめでとう、バクシー。毎度芸がなくて申し訳ねぇが、今年も俺からのプレゼント、受け取ってくれるよな?」

言いながらバクシーに向けて両腕を広げる。毎年恒例、プレゼントは俺、ってやつだ。らしくない神妙な顔つきをした男は、俺の両の手首を自分の手で左右それぞれに掴んだ。ゆっくりと持ち上げられた俺の手に、バクシーがそっとまるで壊れやすい宝物にそうするみたいに口づける。

「すーげぇ嬉しい俺が一番欲しいもの、だ。お前以上に欲しいものなんてないぜ、ジャン」

指先に、指の背に。指の付け根、それから手の甲。体温の高いバクシーの熱い唇が何度も掠めるように押し当てられては、皮膚を薄く吸うように啄む。その感触だけでもぞくぞくするほど気持ちいいってのに。キスの合間に肌を撫でる吐息が唇以上に熱くてそれがバクシーの欲情をそのまま顕しているかのようで。まだ手にしか触れられていないっていうのに、俺はズボンを脱いだら腹にペニスが貼りつくだろうなと思うぐらいに勃起していた。

「んん!」

カリ、と。バクシーが掴んでいる箇所のすぐ上、手首に浮き出た骨に野郎が柔く歯を立てた瞬間。堪えきれずに声が漏れる。我慢の利かない俺のペニスの先端から、じわりと先走りが溢れ出て下着を濡らしたのが分かった。それだけじゃない。カサブランカを出る前に自分で仕込んでおいたオイルが体温で緩んだそれがじゅわり滲み出て後ろの孔の周辺を濡らしているのを、感じる。漏らしたかのような感触に、反射的に背筋を震わせた俺を見て。バクシーは掴んでいた手首を離し、代わりに俺の背中と腰に腕を回して力強く抱き寄せた。

密着したせいで、野郎の股間が俺以上にパンパンに張りつめているのが革ズボン越しでもはっきり分かる。バクシーにも俺がガン勃ちしてるのが伝わっていることだろう。俺の腹に当たっている勃起を擦りつけるみたいに腰を揺らしつつ、バクシーが身を屈めて耳元に顔を寄せてくる。

「ジャーン。おめぇから、スケベな匂いがすんぜェ」

俺の耳たぶを飴玉みたいに舐めしゃぶりながら、熱い吐息と一緒に吹き込まれる声。欲情を隠す気なんて一切ない、興奮に濡れて発情しきった雄の声色。

「お前のケツの穴が、俺にやられたいって、そう言ってる匂いたまんねぇ
「ぅん犯して、バクシー。お前のそのでかちんこで、俺のケツ、奥の奥までレイプして中に出して、俺の全部、お前のものにしてくれよ
「クッソ可愛いなァ、オイ

背中と腰に回されていたバクシーの手が俺の身体をなぞりながら尻まで滑り落ちて。昂ぶりがそのまま顕れたような手つきで、ズボン越しに左右の尻たぶを揉みしだかれる。その拍子に、聞き慣れない物音が鼓膜を打った。

音で存在を思い出した俺は、それを銀紙に包まれた菓子を三つほど、ズボンのポケットから取り出した。

「んだ、そりゃあチョコ、け?」
「だな。多分?」

断言できなかったのは、俺自身、それが何であるのかをちゃんと確認していなかったからだ。以前バクシーがハンス爺のとこから貰ってきたキスチョコよりは大分高級感のある、箔押しの銀紙に包まれたそれ。俺の掌に乗っているそれは、今日の夜、一緒に飯を食ったイーサン親父が寄越したものだった。
『お前、確か甘いものが好きだっただろう』という台詞と共に渡されたのだから、少なくとも菓子であるのは間違いないだろう。他の連中の分までは用意できなかったのか、それとも端から俺以外には渡す気がなかったのか。親父の帰り際に俺だけにひっそりと手渡されたそれ。あのオッサンは、たまに俺のことを年端も行かない子供と勘違いしているんじゃないかと思うような行動に出ることがある。まあ、そこでガキ扱いに腹を立てて突っ撥ねるほど子供でもない俺としては、パパありがとう愛してるわん、と言って素直にポッケにしまったわけだ。後でバクシーと一緒に食おう、と思って。口の中でキスチョコを分け合ったあの時のキスを、思い出して。

「なあ、これ、食おうぜ」

前みたいに一緒に、と。言葉にしなくても当たり前のように伝わって、俺の腹に押しつけられているバクシーの勃起がビクンと震える。あの時の頭の中が真っ白になるような甘ったるいキスをコイツも覚えてんだな、と思ったら、俺の手も興奮で震えてきて。二つは脇のテーブルの上に放り出し、手の中に残った一つをその、お綺麗な包装紙を笑えるくらい不器用な手つきで乱暴に剥くと、中から高級そうなチョコレートが転がり出てきた。勢い余って取り落としそうになったそれを落ちる前にバクシーがキャッチして。

「ジャァン、お口、あーんってしてくれよぅ」

あの時みたいに俺に食べさせようとするのに素直に従って、俺は口を開けた。口の中に広がる上品な甘さと、多分すごく高そうな酒ブランデーか?の芳香。すまねえ親父、これ、多分一粒一ドルくらいする高級品だ。子供に渡すようなもんじゃねぇわ。頭の中で親父に謝っている俺に、バクシーが顔を近づける。

「ジャンよぅ、俺にも
「ン

重ねた唇の隙間からぬるりと口の中に侵入してきた長い舌が、チョコと、それにまみれた俺の舌に触れた瞬間。ビクリ、とバクシーの身体が一瞬震えてから硬直したのが分かった。それから、まるで怯えるみたいにそろそろと、バクシーの舌が動き出す。

「ン、ふ?」

いつもなら俺の口の中の唾液を全部啜り尽くすようなキスをかましてくるはずの男が。ミルクを舐める子猫みたいな舌使いで俺の口の中を可愛らしくちろちろと舐めてくる。

「ジャァン、ジャァァン」

俺の口の中を必死に舐めながら、まるで子供みたいな甘えた声で名前を繰り返し呼んで。どうにもおかしいバクシーの様子を確認しようと閉じていた目を開けて顔を離すと。さっきまでの欲望でギラギラした目つきとは異なる、とろんとしたバクシーの目がそこにはあって。こいつ、もしかして酔ってるんじゃないのか、とそこでようやく俺は気付いた。

マジか。酒に弱いのは知っていたが、まさかこんな、菓子にちょっと混じった程度のアルコールでもここまで酔っ払えるもんなのか?)

そうは思うものの、現にバクシーの野郎は実際にこうして明らかに酔っ払った様子を見せているわけで。今ここで酔っ払ったフリをしたところで何の得があるわけでもないのにわざわざそうする意味もないわけで。

「ジャ、ァ、ンキス、もっと、キス、し、てぇ

何だか、マジソン刑務所にいた時をバクシーがヤク中のイカレ野郎のふりをしていた時を彷彿とさせるような口調。あの時は、可哀想な野郎ではあるが正直気持ち悪い、としか思っていなかったその子供じみた物言いが。

「クッソ何か、ちょっと可愛いな

たまにはこういう甘え方をされるのも悪くないような気分になっちまった俺は。バクシーの髪の毛を左手でかき回すみたいにして頭を撫でてやりながら。右の手で掴んだ二個目のチョコレートを口の中に放り込んで、改めてバクシーに口づけた。

「誕生日、おめでとう、な、バクシー」