「最期の日を恐れてはならない、望んでもならない」。+badeggのバッドエンドに欲しかった、キメセクバクジャン。

Summum nec metuas diem nec optes.

4,726文字 / 約6分
   文字サイズ:

お題箱にもらったお題より。

キメセクどうでしょうか。
ラッキードッグ1キメセクないのが口惜しいのです。
ルキーノBADキメセク来て欲しかった~。

ああ、そういえばbadeggでの初手レはキメセクですね。でもジャンさんがどろどろのキメセクが見たいです!

ジャンの下腹部に刺青を入れた時、バクシーはこれまでにないほどに心が満たされていくのを感じていた。世界に一つしかない宝物に自らの名前を刻んで自分の物だと主張するのにも似た、高揚感。
その後、ジャンが自ら脚を身体を開いて、レイプではなく合意の上でのセックスをした。自分の存在を、気持ちを受け入れてもらえているのだと感じられるその行為は、これまでのバクシーの人生にはついぞ存在しえなかった種類の幸福感を伴っていた。
だから、男は気づかなかった。初めての恋に浮かれ、普段であれば決して見逃したりするはずのない違和感を幾つも見落として。気づいた時には、全てが終わりかけていたが、それでも諦めきれずに、わずかな希望に縋りつき続ける。

◇ ◇ ◇

「いよう、バクシー、やっと来たか」

リリーに言いつけられた用事を済ませて廃屋街の一角にある隠れ家に顔を出したバクシーを出迎えたジャンは、ひどく機嫌が良さそうだった。今日の日中、バクシーとジャンの二人は街に乗り込んできたシカゴのイボガエルを二〇匹ほど叩き潰した。そういう日は血が滾ってやたらとセックスをしたくなるもので、特に申し合わせることもなく自然とこの隠れ家にヤリ部屋に二人揃って足を向けてしまう。
一足先にこの場所に着いてシャワーを浴びたジャンの金髪は少し湿っていて、バクシーの胸には興奮と少しばかりの無念が去来した。シャワーを浴びたということは、ジャンの準備が自分に抱かれるための用意が既に終わっていていつでも抱けるということであり。だが、タイヤレバーを振り回して返り血に染まっていたジャンの姿は最高に魅力的だったのでもう少しその姿を楽しませてほしかったという思いも捨てきれない。

「お前もあっちでシャワー浴びてきたのか」
「あ、あぁ。ババアが薄汚れた格好でキッチンに入ってくんなってうるさくてよ」
「へーおぉっと」

座っていたソファから立ち上がったジャンがフラフラとバクシーに近寄っていく。ジャンのいる方角からふわりと漂ってきた石鹸の香りにバクシーは一瞬だけときめいて。だが、直ぐにその表情は険しいものへと変じた。酔っ払いのようにおぼつかない足取りのジャンが、その辺に転がっていた空き瓶につまづいて転びかけるのを、とっさに伸ばした起重機のような腕が支える。

ジャン、おめぇまたクスリ、やったんか
「ハハ、ったりめーだろ。素面でてめぇとセックスなんてできっかよ」

ジャンの返答に沈黙で応じるバクシーは傷ついたような表情を浮かべていた。自分の身体を支えてくれている男の顔を見上げるジャンの目にも、それは確実に見えているはずだが、ジャンは意に介する様子もなく男の頬へと手を伸ばし。

「なぁもう準備、してあっからさやろうぜ」
ジャン

ジャンは決して自分を受け入れてくれたわけではなかったのだ、と。バクシーが気づいた時にはもう遅かった。自分が男に抱かれているという現実から目を逸らすため、ジャンはクスリに手を出しているのだと。そのことに気づいた日の絶望を、バクシーは今も鮮明に覚えている。
観察力に優れるバクシーがそれに気づけなかったのは、始めのうち、ジャンのクスリを使うタイミングがセックスの際に限られていたせいだった。ジャンが普段とは違う様子を見せても、それはセックスの快感に溺れているせいだろうと見逃してしまっていた。他ならぬバクシー自身が、ジャンとのセックスに頭がおかしくなりそうなぐらいに溺れてしまっていたものだから、相手もそうなのだろうと思い込んでいたのだ。
当初は気休めから少量を経口摂取していたはずが、次第に物足りなさを覚えるようになって皮下注射という形に変じ。そうして目に見えて残された痕跡は当然のようにバクシーの目に留まることになり、事は露見した。
だが、事の次第を知って愕然とするバクシーに対してジャンは一向に悪びれる様子もなく、むしろ堂々とクスリを使用するようになり。止めさせようとしたバクシーは、「最初に俺にクスリを使ったのはお前だろ」というジャンの言葉の前に、それ以上何もできなくなった。
「ん、じゅ、んぁ、ふ

左腕で自分の首にしがみつきながらキスを仕掛けてくるジャンを引き剥がすことなどできるはずもなく、バクシーは痛みを堪えているような表情のまま、舌を絡ませて応じる。熱に浮かされたようにどろりと蕩ける蜂蜜色の瞳を見つめる視界の隅で、右手で下ろしたボトムを蹴り飛ばすジャンの脚が見えた。
先ほどからバクシーの鼻先をくすぐっていた精油の香りが一段と色濃くなる。ワセリンとグリセリンを混ぜて精油で香り付けした、バクシー手作りの特製ローション。ジャンの直腸内に仕込まれたそれが、体温で溶けて匂い立っているのだと思うと、バクシーの股間も興奮で張り詰めてくる。

「ジャン、ジャン

キスしながらもつれるようにソファに倒れ込み、自分も革パンツを脱ごうと一度身体を離したバクシーは、ソファの上にしどけなく寝転がるジャンの身体を見下ろして硬直した。

「ジャン、そいつは
「ん? あぁ、これか」

ジャンの白い太腿の内側には幾つかの鬱血痕が散っている。注射の痕とは異なるそれは、バクシーもジャンに何度か付けたことがあるものだったが、今ジャンの脚にあるそれに覚えはなかった。

「クィーンクォーターのヤクの売人がさぁ、カネはいらねぇからやらせてくれって言ってきてな。俺もカネなかったからちょうどいいかなって思ってさ」

この街では碌なシノギがないからとクィーンクォーターに向かったマックスに、面白そうだからとジャンが付いていったのが五日ほど前のこと。その二人がロックウェルに戻ってきたのがつい昨日の話だった。一緒に行く相手がマックスならば間違いの起こりようもないと安心しきっていた自分を殴りつけたい気持ちになったバクシーは。ジャンが他の男に抱かれたという出来事以上に、たかがクスリと引き換えに易々と自分の身を差し出したという事実にショックを受けていた。

「ジャ、ン
「おめーに散々犯られちまってんのに、今更もったいぶることでもねぇじゃん?」
ッ」

俺、が、おめぇを、貶めたのか)

「オラ、つまんねぇおしゃべりはその辺にして、そのデカブツさっさとぶち込んでくれよ」

ソファに横向きに寝そべっていたジャンは、上になっている左側の太腿を腕で抱えて支えながら、脚全体をゆっくりと持ち上げた。バクシーの目の前で、ジャンの秘部男性器も睾丸もアヌスも、そしてそこに散らされている他の男の所有痕まで、全部が曝け出されて丸見えになる。

「なぁ、早く風呂場で準備してた時からずっと、おまえのでかいのが欲しくてたまんなかったんだ入れてくれよ」
ッッ」

股の間に挿し込んだ右手の指をアヌスに宛がうと、バクシーに見せつけるように二本の指で入口をゆっくりと開いてみせる。ひくひくと蠢くアヌスは物欲しげに口を開けて内側の赤い粘膜を覗かせ、そこから透明な粘液がドロリと溢れ落ちた。その光景に、脳のどこかで神経が灼ききれたかのように、バクシーの頭が熱くなる。

「クソ、ジャン、ジャンッ!!」
「あ、き、たぁッハハ、ハハハハハハハハハハ!!! あ、あ、出るッ」

高く掲げられたジャンの左脚を抱え込んだバクシーは、誘うように広げられたアヌスを己のペニスで一息に貫いていた。ワインボトルと揶揄されるほどの質量を根元まで一気に挿入されたというのに、ジャンは痛がる様子もなく狂ったような笑い声を上げ。それから下腹部を震わせたかと思うと、クスリの影響か中途半端にしか勃起していないペニスからどろりと精液を溢れさせる。空気中に漂う栗の花にも似たその匂いに興奮を煽られて、バクシーも思わず少しだけジャンの中で出してしまったが、それ以上は歯を食い縛って堪えた。

「あー、おめぇのチンポ、最高ーーーー売人チンポじゃ、奥まで、届かなくて、ずっと物足りなくってッ」
ッ」
「なぁ、もっと奥、突いて、もっともっともっともっともっとぉ、奥の奥まで、入っちゃいけない、とこまで、入り込んでェ、口からチンポ出てきそうなくらい、ハハ、アハハハハッ」
「こう、かよッ」
「ァァァァァァァーッ、チンポ、チンポ、ケツの奥、イイ、イイ、死にそうにイイィィィッ!!!」

請われるがままにバクシーが剛直を奥まで捻じ込むと、ジャンは壊れたような悲鳴を上げながら、自分のペニスに手を伸ばし、それを乱暴に扱き上げる。S状部分まで入り込んだ先端が熱い粘膜にきゅうきゅうと絞り上げられて、バクシーは堪える間もなく、ジャンの奥で射精してしまった。

「なぁ、奥、もっとぐぽぐぽってぇ、して。おまえのチンポで、虐めて、気持ちよくしてぇ」

バクシーが射精したことには気づいているだろうに、そんなことなどおかまいなしにあるいはバクシーであれば一度や二度出したくらいでは萎えないと分かっているからかジャンは腰を揺すって更なる快楽を強請ってくる。

「ジャン、ジャンッ、クソ、エロい、ジャン、ここかよ、ここがいいのかよっ」
「んぁ、それぇ、あ、いい、いい、イく、またイく、んあぁぁぁぁうぅぅぅッ」

S状よりも手前にある弁を亀頭で押し開いては戻す動きをバクシーが繰り返す。開く度にぐぽん、という感覚が走って、他では得られない快感にジャンはぐるりと白目を剥いて意識を飛ばしかけた。びくびくと跳ねてのたうつ身体を、鋼のような肉体が押さえ込む。

「あ、あ、あ、いき、でき、ねぇッ」

再び、今度は完全に勃起しきったペニスから先ほどよりも勢いよくジャンが精液を迸らせる。だが、それを見てもバクシーは腰の動きを緩めようとはせず、ジャンを責め立てた。長い右腕でジャンの左脚を抱え込みながら容赦なく腰を突き入れ、それから空いていた左手で、ジャンの精液まみれのペニスを掴んで先端を捏ねるように握り込む。

「イッてる、イッでる、のに、また、イグ、イグ、イグゥゥゥゥッッ」

のけぞったジャンは、ペニスの先端から今度は透明な液体を噴き出してガクガクと痙攣し。それから、落ちた。

ジャン?」

急に重たくなったように感じられるジャンの左脚を右腕に抱えたまま、バクシーはジャンの潮で濡れた左手を目を閉じた彼の頬に伸ばす。指先に触れる温かな吐息と繋がったままの身体から伝わってくる規則正しい拍動に安堵のため息を零し。抱えていたジャンの脚をゆっくりと下ろすと、眠るジャンに覆いかぶさるように上体を倒したバクシーは、涙と鼻水と涎とで濡れるジャンの顔にそっとキスを落とした。

「好きだぜ、ジャン

以前、本人に向けて言った時に、二度と言うなと切り捨てられた言葉。もう一度口にしたら、二度とセックスはしないと言われてから、決して本人には言わないようにしている言葉を小さく口にする。
バクシーが惚れ込んだキラキラの金色の獣は、既にその輝きを失いつつあり、近いうちに完全に消えていなくなってしまう。そう分かっていても、バクシーはその日の訪れを止めることはできないし、だからといってジャンへの恋心が消えてなくなるわけでもないことを知っていた。

◇ ◇ ◇

これは、間違い続けてしまった男と、それを赦すことのできなかった男が到達する結末への物語。