ドラマCDの「ジャン、キス! キス!!」が好きすぎて書いた話。

キスの話

1,461文字 / 約2分
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バクシーと初めてキスした時は、あれはキスなんてもんじゃなかった。俺の血にまみれた舌が口の中に無理矢理入りこんできて、怯えて縮こまってる俺の舌を引きずり出してしゃぶり尽くす。その強引さに息もできず翻弄されるがままの俺の首に手がかかって、俺はケツに野郎を銜え込んだまま意識を飛ばしちまった。そんなわけだから、あの時のキスに関してはそこまではっきり覚えてるわけじゃねぇんだが。それでももう一度言う。あれはキスなんてもんじゃねぇ、口をレイプされたようなもんだった、と思う。
その次にキスした時も、やっぱり食いつくみたいに口を塞がれて、チンコを突っ込まれながら舌と唾液をねじ込まれて呼吸を奪われた。今度は首を絞められたわけじゃねぇのに、それでも意識を失いかけるぐらいの強引なキスだった。否、失いかける、どころか、もしかしたら本当に一瞬だけ意識が飛んでたかもしれねぇ。その直後に俺の体内でバクシーが弾けて、その刺激のせいで意識が戻ったんじゃないかって気がする。
とにかく、野郎のキスは俺を殺す気かってぐらい強引だった。バクシーと日常的にセックスをするようになっちまってから、ある日それに文句を言ってみたことがある。その時、バクシーはちょっとだけ唇を尖らせるみたいな電柱みたいな図体の爬虫類みたいな顔した男がやったところで可愛げも何もねぇ、そのはずなのに、何でかやけに可愛く見えちまう、拗ねたガキみてぇな顔をして。

「しょーがねぇじゃんかよぅ俺、今までキスなんてしたことなかったし

俺の顔を上目遣いでチラ見しながらボソボソ言い訳する男の顔を思わずじっくり見つめちまったのは、きっと俺じゃなくてもそうしただろうと思うんだが。自分と同年代の、童貞だったわけでもねぇ男がその後、デイバンで俺は童貞だったとか童貞を捨てたとか突然寝言を言い出した件については脇に置いておくキスをしたことがない。一度も。そんなわけあるか、と思って眉をひそめた俺の視線に気づくと、バクシーの唇はますます尖った。

「あの時、ジャンとしたあれが、ファーストキスだったんだってばよ」
「俺とした、っつーか俺が無理矢理されたって感じだったけどな」
そうとも言う」

反射的に訂正しちまった俺の言葉に、バクシーの眉毛がしょぼん、と下がる。その顔に絆されちまったのは、お人好しな俺が悪いのか、バクシーの野郎が可愛いのが悪いのか。

◇ ◇ ◇

ジャン、キス、キス!!」
「ん、ふっ」

俺の口を塞ぐように食いついてきたバクシーが、ずるずる、音を立てて俺の唾液を啜る。相変わらず俺の呼吸を奪うみたいなキスは、だけど、以前ほど強引でも乱暴でもなく何より、気持ちが良かった。何の駆け引きもなく、ただ必死に俺だけを求めて強請られる口づけは、キスだけでこんなにヨくなれるのかってぐらいに気持ちが良くて。
これはバクシーのキスが上手くなったってことなのか。必死に縋ってくる可愛いバカちんぽ野郎に俺のアタマがやられちまって快感中枢が刺激されちまうのか。どっちだって構わないし、どっちだって同じことだ。
熱に浮かされたみてぇな目つきで俺にキスを強請る可愛い俺のヘチマ野郎。お前が俺にキスしてほしいと思ってる時、俺もお前にキスしてやりたいって思ってる。お前が俺とのキスで気持ち良くなってイッちまいそうになってる時、俺もお前のキスで気持ち良くてイきそうになってる。
お前のファーストキスが俺なら、お前が最後にキスする相手も俺だ。俺の最後のキスの相手も、お前だ。
俺たちはそれだけで、充分だった。