檻の中のふたり』の続き。マジソンを脱獄してロックウェルに帰ったジャンさんとバクシー。前作よりはちょっと距離が縮まってる、かもしれない。

檻の外のふたり - 1/2

9,511文字 / 約11分
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ロックウェルの廃屋街の一角にある隠れ家で寝ていた俺はギャング団GDの幹部の一人、ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテは、人間の気配に目を覚ましてベッドの上で起き上がった。かつては多くの家族連れが幸せな家庭を築いていたんだろうが、今となってはこの一帯に住んでいる人間なんていやしない。それなのに、この区域に入り込んだ人間がいる。警戒するなって方が無理な話だった。
俺のヤサがこの辺にあるっていうのはGDの連中なら何となく知っている事実だが、だからこそ連中はここに近づこうとはしない。
GDの中における俺の立ち位置は微妙だ。元CR:5言うなればGDの敵対組織の構成員で、ロックウェルでは珍しいイタリア系。ある日親父に連れてこられたポッと出の若造がいきなり幹部に大抜擢されたってんだから、そりゃあもう組織の内部は大騒ぎ。一時は混乱状態に陥りかけた。
その場を収めたのは、「ジャンカルロは俺と殴り合って最後まで倒れずに立っていた」っていう親父の一言だった。兵隊はもちろん、現在幹部に名を連ねてる連中にも、親父とやり合って殴り倒されずにいられると自信を持って言える野郎は存在してなかったらしく。一応はその言葉で、俺の幹部入りが認められることになった。ギャングはマフィアと違って掟や上下関係よりも実力が物を言うってのは聞いていたが、実に結構なことだ。
とはいえ、親父との殴り合いでは存分に手加減されていたって自覚のある俺としては何とも居心地の悪い話だ。別に幹部にしてくれなんてお願いした覚えもなかったんだがなぁ。一体どうしてこうなったって問いかけには、間もなくしてそれらしい回答が見つかった。GDに入ってしばらくして分かったのは、幹部連中にマトモな野郎がいねぇってことだった。
デイヴやホーナスって古参の幹部連中はボスを裏切って自分がトップに成り代わるチャンスを虎視眈々と窺ってるようなタイプだ。新参者の俺が見ても分かるんだから、当の親父が気づいてないはずはないと思うんだが。それでも連中はでかいツラして幹部の座に居座ったままだ。
同じく古参幹部のマックスは、連中とは違って〝いい奴〟だった。ギャングじゃなきゃそれで何の問題もなかったんだろうが、ギャングとしてはちょっとどうかと思うような人の好さ。信用はできるかもしれんが背中を、タマを預ける気にはなれねぇ、そういう野郎だ。

そんで、バクシーだよなぁ)

バクシー・クリステンセン。俺と同い年の若手幹部。群れることを嫌い、時には親父の命令すら無視して、自分勝手な単独行動を繰り返してばかりの男。気に入らなければ敵どころか味方でも平気で殺す、無軌道で破天荒な男。デイヴやホーナスは野郎をキチガイ呼ばわりして忌み嫌っている。兵隊たちの中にも、いつ自分たちに牙を剥くか分からないバクシーを恐れる空気が蔓延してて、奴を取り巻く空気ってのは新参の俺にもはっきり見て取れる程度に不穏なものだ。
マァー、揃いも揃って問題のある連中ばっかじゃないですか、奥さん。そんなのを幹部に据えておかなくちゃならない程度には、今のGDは人材不足ってわけだ。何だったら、古参幹部だったくせにボスを裏切って粛清されちまった野郎もいた。つい最近の話だ。
親父が俺をCR:5から引き抜いてそんな危機的状況のGDの幹部に据えたってのには何らかの思惑があるんだろうってのは察するに余りある。だけど俺はその思惑とやらについて何も聞かされていない。これって好きなように動いていいってことなのかね。
今のところはそれなりに部下もできてそこそこ上手くやってはいる俺だが、部下以外の連中からは遠巻きにされてる感じが大いにある。デイヴやホーナスなんかは俺のイケメンぶりを妬んでか、親父に股を開いて幹部の椅子に座った、なんて言いふらしてくれてるらしいしな。それを本気で信じてる連中なんてほとんどいやしないだろうが、古参の幹部に睨まれてる俺と積極的に関わろうって気になれないのも確かだろう。俺も大概、バクシーと似たり寄ったりの腫物扱いを受けてるってわけですよ。
そんなわけで、俺のヤサがあると分かってるこの辺りに近づこうって人間はまずいない。部下たちにもここには来るなと言ってあるし、俺が寝起きしている家屋の正確な所在を知ってる人間は一人もいない。そのはずなのに、だ。
外の気配はどういうわけだか、俺のいるこのヤサを真っ直ぐ目指して向かっているかのように、迷いのない足取りで近づいてきていた。

無言で枕の下に手を伸ばし、ルガーを手にする。その間にも足音はどんどんと近づいてその重たい靴音が聞き覚えのあるものだってことに薄々気づきつつ、部屋の入り口に向けて俺はゆっくりと銃を構えた。扉の向こうで足音が止まる。

「よぅ、金髪ドギィ。そこにいるんだべ? マスのかきっこしようやァ」

「返事しねぇならこのドア、吹き飛ばしちまうけどいーのかァ?」
チッ

重たい靴音に、聞き馴染みのある声と碌でもない誘い文句バクシーの野郎に間違いなかった。野郎の得物は水平二連のショットガン、それも象を撃つためのもんだ。ここでぶっ放されたらドアどころか俺まで吹っ飛ばされかねない。普通の感性の持ち主相手だったらハッタリやブラフだと判断して様子見するところだが、奴に常識が通用するとは思わない方がいい。やると言ったらマジでやりかねない、俺の知る中でも頭三つ分ぐらい飛び抜けてイカレた男だ。俺は舌打ちをしてドア越しに野郎を睨みつけたが、それ以上の抵抗はできるはずもなく。

「今開けてやるからそこで待ってろ!」

セイフティをオンにしたルガーを腰に挟んでドアに歩み寄り、掛けていた鍵を外した。二ヶ所ある鍵の二つ目を外すや否や、外側からドアが開かれる。この野郎、ちょっとの間待つこともできやしねぇのか。出入口の梁にぶつけるんじゃねぇかっていうような長身が部屋の中に押し入ってきて。俺は野郎の腕に捕まる前に部屋の奥、さっきまで寝転がってたベッドの方へと避難した。

「よーぅジャンカルロ坊や。テメェのションベン臭ェチンポかガッバガバに緩みきったケツマンコ、どっちか貸してくれや」

開口一番、最低な誘い文句が飛んでくる。さっきはマスのかきあいって言ってた癖に言ってることが変わってるじゃねぇか、とも思ったが。こいつにとっては男同士のセックスなんてマスのかきあいと変わらないのかもしれない、と考え直すと妙にしっくりきちまった。

「誰がガバケツだよ。俺のケツの締まり具合をお前に確認させた覚えはないんですけどぉ」
「ホホゥ? そんなに自信があるなら
「やらせねぇよ?」
「オイオイオイオイ、もったいぶりやがって、そういう野郎に限って実際ヤってみたら大したことねぇってのがよくあるオチなんだぜェ? ドギーよぅ」

もったいぶるも何も、こっちは正真正銘ピカピカの処女だっつーの。だけどそんなことをうっかりこいつに言おうものなら、余計に興味を持たれた挙句の流血レイプ祭り。そんな未来が見えている。

「煽ったってやらねぇもんはやらねぇぞ。まぁ、竿役ならやってやってもいーけど」
「ホ! 妥協しましたァって空気出してきやがる」
「妥協してんだよ! 俺に男とやる趣味はねぇっつーの」
「そんで、若いオンナなんか一人もいねぇここロックウェルで、右手を恋人に毎晩寂しくシコシコぴゅっぴゅって励んでるって訳だよなァ? そんなロンリーマスカキボーイの金髪わんわんに優しい俺様からあったかぁいまんこのデリバリーよォン。とっととチンポ出せやオラァ」

いや、言い方ひっでぇな。バクシー相手に情緒なんてもんを求める気はねぇしそもそも持ち合わせてるとも思ってないんだが、それにしたって、だ。だけどまぁ、俺のケツへの興味を失ってくれたんなら何より。チンコを生贄に差し出すことでケツの処女が守れるんなら安いもんだろう。
否、違う。俺は、本当は期待してるんだ。過去に一度だけバクシーの野郎と寝たことがある。マジソン刑務所のリネン室で、こいつに乗っかられて強引に搾り取られたあの時のセックス。有体に言っちまうとそれまでに経験したことがないくらいに良かった、あれ。
男のケツに突っ込んだ経験ならそれまでにもあったが、バクシーのそれが他の男たちと際立って違っていたのかと言われるとそうじゃない。どっちかって言えば機能そのものよりも、野郎の性質の問題で油断してたらいつの間にか命を奪われてたって展開になりかねないような危ない男との行為に興奮しちまった、ってのが一番正解に近いのかもしれん。

(俺、アドレナリンジャンキーってわけじゃねぇはずなんだけどなぁ

「オイオイ、俺を目の前にして意識をお留守にするとか、てめー実は意外と命知らずだよナァ、ドギーちゃん」

しまった、と思った時にはもう遅かった。野郎とのセックスの記憶に思いを馳せてる間に詰められていた距離。嫌な予感に後ろへ飛び退こうにも、俺のすぐ後ろにはベッドがあって然程の距離を稼げない。バクシーとの距離はわずか六インチ。この距離から伸ばされる野郎の腕を避ける反射神経も、巨躯を突き飛ばすだけの膂力も持ち合わせてなかった俺は。あっという間に肩を掴まれてそのままベッドへと投げ飛ばすように押し倒されちまった。乗しかかってきたバクシーにその、俺よりもひと回り以上でかい野郎の質量で、腿から下が固定されちまったのが分かる。

「ってぇ

衝撃の半分くらいはスプリングが吸収してくれたとはいえ、ダメージゼロってわけにはいかなかった。揺さぶられた脳のせいで歪む視界の中でギラリと何かが光る。刃物だ、と思った時にはもう、それは俺の頬から首筋にかけて押し当てられていた。バクシーの奴の得物の一つ、肉切りナイフだ。その切れ味についてはごく最近、組織の中から出た例の裏切り者がその身をもって証明してくれている。あの人面マスクは実に芸術的な出来だった自分がそうなりたいとは絶対に思わねぇが。肌に触れる冷たい刃物の感触と冷淡に俺を見据える爬虫類じみた視線に身をすくませる俺に。

「なぁドギー、わんころよぅ、自分が何すりゃいいか、分かるよナァ?」

妙に優し気な口調に促され、俺は無言で自分のズボンへと手を伸ばした。ベルトを外し、ファスナーに指を掛け

カッツォ」

意図する間もなく口から飛び出したパロラッチャに、バクシーが訝し気に眉を顰め。俺の手の伸びた先へと視線を落とした男の口が、大きく歪む。

「ハーッハハハハハァァァァー!! この状況でガン勃ちさせてるとか、ジャン、オメエはマジで面白ぇ野郎だよナァ!!」

哄笑する野郎に噛み付く気力さえ湧かない。バクシーの指摘した通り、俺の股間はファスナーを容易に下ろすことが叶わないぐらいにガチで勃起していた。その事実にバクシーの機嫌はすっかり上向きになったらしい。普段はドギーだのわんわんだのと犬呼ばわりしている俺のことを珍しく名前で呼んだことから、それが察せられる。

「しゃーねぇからよぅ、俺が手伝ってやらぁ。ホーラ、ラッキーチンチンの御開帳~ってナァ!」

左頬に押し当てられていたナイフの感触が消えたかと思うと、バクシーが腰の鞘にそれを戻しているのが見えた。内心ホッとする俺のズボンのファスナーに手をかけた野郎は、両手を使って苦も無くそれを下ろして前を寛げさせ。

「オラ、ケツ上げろ」

もうどうにでもしてくれ。そんな投げやりな気分で言われた通りにケツを浮かせると、ズボンと下着が一緒に摺り下ろされる。その下から飛び出してきた俺のチンコは、何というか、悲しいくらいに完璧に勃起して天を目指せとばかりにそそり立っていた。かろうじて先走りを零していなかったのだけがせめてもの救いだったが、それだって時間の問題といった有様で。

「ご機嫌なチンポじゃねぇの、これならしゃぶってやる必要もねぇわなぁ?」
「ソーデスネ」

無造作に性器に伸ばされる右手にその鉤爪みてぇな凶器じみた様子に反射的に身が竦む。そんな俺の様子を気に留めることもなく、バクシーは俺の勃起の亀頭に掌を被せるように押し当てた。いつの間にかその手に搾り出されていたらしい潤滑剤ワセリン、だろうかが俺の勃起と野郎の掌の熱で溶けて。ただ亀頭を撫で回されてるだけだっていうのに、そのぬめりのせいでアホみたいに気持ちがいい。剥き出しにされた快感の受容体を直に触られてる、みたいな刺激に腰が震えちまう。

「オイオイ、まっさかとは思うがヨォ、こんな程度で出してくれるなよ、ドギーちゃんよぅ」
「ぅるっせぇいつまで人のモン、シコッてるつもりだよ。テメェの欲しがりなケツの穴に入れたかったんだろ? さっさとやれよ」

今この瞬間にでも暴発しちまいそうとはさすがに言わないが。このまま続けられるとこれ以上の醜態を晒しかねないという危機感は大いにあった。苦し紛れに吐き出した俺の言葉を、バクシーが鼻で笑い飛ばす。

「テメェの方がよっぽど限界ってツラしてこきゃあがるぜぇ。入れたくてたまんねぇのはオメエの方だろうがよ、犬っころ?」
「ファンクーロ

半目で俺を見下ろしてくる野郎の表情は小憎らしいことこの上ないが、全くもってヤツの言う通り。あの日味わった暖かい肉壺の感触を忘れていなかったどころか、絶対に誰にも知られたくはないが、あれから俺はバクシーに突っ込んだ時のことを思い出して何度も抜いていた。ザーメンを出した後の賢者タイムには死にたい気分になるっていうのに、それが分かっていながらやめられずに繰り返した俺のチンコは、目の前にいるバクシーの声と匂いに反応して、ビクビクと脈打つ。

「ドギー、俺様に突っ込みてぇっておねだり、してみろよ」
カッツォ」
「ナァ、ファックミィプリーズって、言ってみな」

(誰が言うかよ、このクソったれ野郎!!)

心の中ではそう思ったはずだったってのに。意外に器用な動きを見せる野郎の手がシコシコと亀頭と竿の境目の部分を扱き始めるに至って、俺は陥落した。

「クッソ、入れさせてくれ、バクシー!」
「ンーーーーーいぃぃィイイねぇ。もうひと声」
「ヴァッファンクーロ! ファックミーバクシー、テメェのイカレたケツの穴で俺のチンコを可愛がってくれ!!」
「ハハ、ハハハァ」

上半身を傾けたバクシーが、俺の顔を覗き込んでくる。獲物を狙う爬虫類じみた笑顔に背筋はスッと冷えていくが、股間が萎える気配はやはりない。

「そんじゃ、マァ。ちゃんとおねだりできた犬っころにご褒美をくれてやるかァ。上手にできたら褒美をやるってのは飼い主の義務、だからヨ」

俺の腰を跨いで膝立ちになったバクシーが、自分の革ズボンを下着ごとまとめてずり下げる。中から現れた野郎の勃起は、やっぱり冗談みたいなでかさだった。だが、以前にバクシーとやることになった際には、ただその大きさに慄くばかりだったはずの俺は。俺に突っ込まれてよがる野郎の股間で揺れて、気持ちよさそうに先走りをとろとろと溢れさせていたそのクソデカペニスの姿を思い出し。射精しながら涎を垂らして快感に耽っていたバクシーの姿を思い起こして。知らずうち、ごくり、と喉を鳴らしていた。

マジかよ。男のチンコが旨そうに見える、なんて絶対正気の沙汰じゃねぇ)

今日ここでコイツのケツにチンコを喰われちまったら、何かが確実に変わってしまいそうな、そんな予感がして。俺は一抹の不安とそして期待感で、自分の上に腰を落とす野郎の姿をじっと見守った。