2024年ベルナルド誕生日記念。バクシー×ジャン←ベルナルド。『028: 離れる、枯れる、涸れる、何もかも』の後日談のようなもの。

緑の泪

892文字 / 約1分
   文字サイズ:
噛み締めて生きてるより。

目が覚めて、カレンダーを見て、ベルナルドは顔をくしゃくしゃにして泣いた。

目が覚めて、カレンダーを見て、ベルナルドは顔をくしゃくしゃにして泣いた。
二年前のその日を、ベルナルドは最愛の人と二人きりで過ごした。その夜、これまでの己の人生における最高で最良の日だ、と。そんな幸せに浸ったはずの男は。今や、それが今後の人生においてもそうなのではないか、と。あんなにも幸せな時間はもう二度と訪れないのではないかと、そんな不吉な予感に胸を引き絞られて涙を零した。
あの日、自分の隣で、酒に酔って頬を染めた彼にキスをしたいと思ったのに、しなかった。彼を驚かせたくはなかったから、などというのは単なる言い訳だった。自分を信頼して無防備な姿を見せている彼に、信頼を裏切ったと失望されたくはなかったから。男を恋愛対象としていない彼に拒絶されて傷つく自分を見たくはなかったから。
そんな臆病な理由であったことを、ベルナルドは自身で痛いほどに理解している。

「奪ってしまえば、良かったのにな

嫌われようが拒絶されようが、力づくでそうしてしまえば良かったと、今ならば思う。ジャンを言いくるめて自分のものにする方法なんていくらでも思いつけたのに、そんな真似ができるはずはないと聖人ぶってお行儀良くしていた己の何と青臭く愚かだったことか。
永遠に失ってしまうことに比べれば、他の男に奪われることに比べれば、今のこの痛みに比べれば。ボス・アレッサンドロや神の怒りなんて何ほどのものでもないと、今ならば言いきれるというのに。
あの日彼の背中を遠くに見送った日から、幾度も繰り返した言葉を舌に載せる。

「必ず、取り戻す。俺たちの俺の、ボスになるはずだった、お前を、必ず

ベルナルドは震える指で掴んだ煙草を唇に咥えると、金色のバンジョーで火を点けようとして。その前に、小さく、呟いた。

待っていてくれ、ジャン

相手がそれを望んでいないことなど、百も承知している男がライターの火を点して深く息を吸い込む。紙と葉の燃えるジチ、という音が静かな部屋の中、まるで泣き声のような響きで鼓膜を焼いた。