その後、改めて目で確認してみたところ、バクシーのケツの穴にはやはりほとんど使われた形跡がなかった。俺とやったあれがほぼ初めてだったに等しいのは間違いない。それなのにどうしていきなりケツを使おうなんて思ったのか。チンコの方はそれなりに使い込まれているような感じがあるんで童貞じゃなかったのは確実だと思うだけに、余計に謎に思えた。
だが、どうやらバクシーにはケツで感じる才能があったようで、繰り返し抱いてやっているうちにいつの間にかすっかりケツで快感を拾えるようになって。むしろ最近では、ケツに入れられなくてもそこにこれから突っ込まれる、という予感を感じただけでアタマの方が先にイッちまうという有様になっている。
今もまた脳イキしちまったらしいバクシーは、漏らしたみたいな量のカウパーで濡れたチンコを揺らし、ケツと太腿の筋肉を痙攣させていて。その痴態を見せつけられている俺は、口の中に溢れてきた唾をゴクリと飲み込んだ。
「あ、じゃあん、じゃ、ぁん……いれて、いれてぇッ」
宙に浮かせていたケツを床の上に降ろし、自分の足を抱え上げたバクシーが、ケツの穴を見せつけるみたいに俺の眼前に曝け出す。この一ヶ月というもの、散々俺のチンコを突っ込まれてきたその穴は周辺がふっくら盛り上がり、わずかに口を開けて中の赤い粘膜を覗かせていた。周囲も、そして見え隠れしている粘膜も、粘液に濡れててらてらと光っていて。チンポから漏らしたカウパーが流れ落ちたってだけじゃ説明のつかないその様相に、俺はまた唾を飲んで。
「俺にやられんのが愉しみで、自分で準備してきたのか?」
「あ、あ、じゃあんのちん、ちん、ほしい」
チンコの先端を穴の周辺にすりすりと擦りつけてやりながら、野郎の淫乱ぶりを詰ってやるが、羞恥心なんて持ち合わせてないんだろうバクシーは何の駆け引きもなく俺のチンコを強請ってもどかしそうに腰を揺らす。漏れた先走りでぬめる俺のチンコはバクシーの動きに合わせて尻の上をなぞるように滑って。狙いを定めたみたいに、口を開けて待っている野郎のケツの穴へとたどり着いた。綻んだ襞みたいなそこが、待ち構えてました、と言わんばかりに先端にちゅくりと吸いついてくる。
「――ッくっそ、気持ち、いい……」
「じゃあん、おく、おく――ッ」
長い脚を俺の腰に絡みつけるみたいにして、バクシーが引き寄せようとする。早く奥まで来てくれと、言葉だけじゃなく行動でも示されて、俺は一息に腰を叩きつけた。野郎の尻たぶと俺の腰の骨がぶつかって、バチン、という派手な音を立てる。
「――ッ、あ、あ、あ、じゃ、ぁん……」
またイッちまったんだろう、目をうるうるに潤ませたバクシーの身体がぶるぶると震えるのが分かった。俺に抱きつきたいのか、両腕を必死に伸ばして縋ってくるのがどうにも可愛く見えて仕方がない。その表情を見ていると多分キスをしてほしいんだろうな、って気がした。バクシーの奴はとにかくキスが大好きで一度し始めるとなかなか止まらず、俺がストップをかけるまで延々と貪っているぐらいだ。だけど、今の体勢からキスをしてやるのはちょっとばかり難しそうだった。残念なことに身長差ってもんがある。俺からバクシーにキスしてやるには首をもう四インチほどは伸ばさなきゃならないだろう。口にキスしてやれない代わりとばかり、見事に盛り上がった胸筋の上で小さく勃起している乳首に唇で触れてみると。
「――あ、あ、あ、ちくび、すき、すき、じゃあんっ」
バクシーは腰を跳ねさせて、俺の胴体を挟み込んだ太腿の締め付けをいっそうきつくさせる。
「ん、ちゅ、ちゅ……こーやって吸うのと、さぁ……れろれろ~って舐めるの、お前はどっちが好き?」
「あ、どっちも、どっちも、すき、じゃあん、じゃぁん、すきぃ」
乳首をいじめてやりながら腰を動かすと、バクシーの腹筋が目に見えてビクビクと震えて波打つのが分かる。ガマン汁なのか、それとも甘イキで先走っちまった精液なのか、ちょっと濁った粘液が震えるちんこから断続的にびゅく、びゅく、と溢れ出してその腹筋の上で水たまりを作っていて。それは淫猥なことこの上ない光景だった。
「フフ、何だよ、そんなに乳首が好きなのか? それとも……俺が好きなんかよ」
「じゃあん、が、すき……」
「ハハ、そっか。俺が好きか。かーわいいなぁ、バクシー」
褒めてやるとギュウッと入口が締めつけてきて、喜んでるのが丸分かりだ。口の中でプツンと勃って主張してくる小さな乳首を軽く噛んでみると、バクシーの中が急にうねって、俺のチンコの先端辺りを舐めしゃぶっていた襞がギュウッと締まった。
「あ、じゃ、じゃぁん、いく、いく」
「ん、俺も、もうもたねーわ」
乳首から口を放して上体を起こすと、床に突いていた手をバクシーの腰に置き、ガッチリと押さえ込んで自分の腰を思いっきり打ち付ける。俺の下で揉みくちゃにされちまってるバクシーの口から途切れ途切れに漏れる喘ぎ声と、ケツの穴にチンコが叩き込まれて生じるはしたない水音、そして、二人の肌が擦れ合い、打ち付け合って鳴らされる乾いた擦過音。それらの音に耳と頭を侵され、煽られながら、俺は頂点を目指してひたすら腰を振る。
「あ、あ、あ、あ――ッ」
「くっそ、出る――ッ」
射精の予感に、バクシーの腰骨を掴む手に力が籠る。痕がつきそうなぐらいの強さで掴んじまってると分かってはいたが、今さらどうにもできなかった。タマがギュウと上がるような感覚がして、そこで作られた熱い精液が尿道を駆け上がってくる。パンパンに張り詰めた俺のチンコに内側から押されたみたいに、バクシーのチンコの先からもザーメンがびゅるびゅると噴き出して、固く引き締まった腹の上に垂れ落ちていくのが見えた。あまりの量の多さに腹の上に留まりきれず、脇腹を滑り落ちて床の上へと垂れていくそれを見つめながら、俺は自分が出したザーメンをバクシーのケツの中に擦り込むみたいに腰を揺すって尿道に残された最後の一滴まで吐き出そうとし。その間もバクシーは身体をビクビクと引きつらせながら、端から涎の垂れている唇の合間から断続的な喘ぎを漏らしていて。
「あ、はぅ、う……」
「あー……スッゲー出ちまった……どっか痛いとこないか、バクシー?」
俺の問いかけにこくりと頷きを返してくるバクシーの頭を撫でてやりながら、すっかり萎えたチンコをケツの中からゆっくりと引き抜く。それだけでも気持ちいいのか、バクシーは微かな喘ぎ声を上げて小さく身体を震わせた。
「じゃあん、きす……」
さっきやってる最中にキスできなかったことをちゃんと覚えていたらしい。まだ寝転がったままのバクシーに覆いかぶさるみたいにして唇を重ね、半開きになったそこに舌を差し込んでやると、待ちかねたと言わんばかりの勢いで熱烈に吸いつかれる。
「ん、じゅる、じゅ、ちゅ、ぢゅ……じゃあん、じゃああん」
「ん、ふ、ふふ、何だよ、俺が好きなのは分かったって……」
お互いの唾液と呼吸を奪い合うみたいなキスを一頻り交わした後。ようやく身体に力が入るようになったのか、むくりと起き上がったバクシーは、俺の腰にタックルするみたいにしがみついてきた。その勢いに負けて床にケツを下ろす格好になった俺の膝の上に銀灰色の頭が乗せられる。鳩尾にぐりぐりと額を押し付けてくるデカい猫みたいな男の頭を撫でてやりながら、俺はふと、まだ服が捲れたままのバクシーの上半身に目をやって。その見事な筋肉を何とはなしに目でなぞった。これだけのもんを持っていながらムショの中ではヒエラルキーの最底辺を這いずっているなんて、宝の持ち腐れもいいところだった。
いつも一方的にやられちまってるこいつをいずれは何とかしてやりてぇな、せめて、やり返せなくても自分の身を守れる程度には。なんてことを思いながら剥き出しの上半身を視線でゆっくりなぞり下ろしていて、ふと気づく。前はもっとあちこちに痣やすり傷ができていたはずだが、今のバクシーの身体にはそういったものが見当たらない。
そういや、看守や俺たちマフィアからも見下されいじめられてはいたが、こいつを一番いたぶっていたのは主にGDの連中だった。ゴンザレス一味は言うに及ばず、そこからあぶれちまったらしいGDのハズレクジ野郎どもも、事あるごとにこいつをリンチしている姿を見かけたものだったが。そういった連中はみんなあの日を境にここからいなくなっちまった。
(――そうか。今はもう、前ほどひでぇ目には、あってねぇのか……)
だったらもう、俺がいなくてもこいつは大丈夫、なのかもしれない。いずれ俺がこのムショを脱け出す時が来ても、罪悪感を覚える必要はない、のかもしれない。
「じゃあん、ずっと、いっしょ……」
まるで俺の考えていることを見抜いたみたいなバクシーの言葉に、息が止まりそうになった。こいつは時々俺の内心を見透かしたようなことを言い出して、俺を驚かせる。恐らくは偶然なんだろうとは思うが、それでも、野郎の言葉は時に酷く俺に突き刺さった。
「だと、いいな……」
脱獄しなかったとしても、あと五ヶ月も経たないうちに俺はお勤め終了だ。バクシーの野郎がどういう罪状で何年の懲役を食らってるのかは知らねえが、ここを出れば俺たちは別の組織に所属する――敵同士、なのだ。いつまでも一緒にいられるなんて、夢物語でしかない。それでも、今はまだ、少しでもこんな時間が長く続けばいいと、俺はそう、思って。
自分の膝に乗っかっている猫に向かって身を屈め、銀灰色の毛並みにそっとキスをしてやった。