後から聞いたところによると、一階の房の連中は騒動のせいで眠るどころじゃなかったらしいが、俺は朝までぐっすり眠っていつも通りに目が覚めた。てっきり〇時の巡回で幹部連中の脱獄がバレて、夜中に叩き起こされるものかと思っていたのにだ。当てが外れて肩透かしを食らった気分になった俺は、その後更に混乱することになった。その日は、起床のベルが鳴っても看守がなかなかやってこなかったのだ。
やっと来たかと思えば、他の房には寄らずに真っ直ぐ俺の許へ向かってきた二人の看守に挟まれるようにして俺一人だけが房の外へと連れ出され、そうして、前夜に発生したらしい事件との関わりを問い質された。四人の脱獄の件で呼ばれたのだとしか思っていなかった俺が、思ってもみなかった事件の話にアホみたいに口を開けて驚くことしかできなかったのは言うまでもない。
どうやらムショの関係者サイドは、同じ日に脱獄した二組のグループが共犯関係にあるのではないかと考えているらしかった。そのためにその件について根掘り葉掘り訊かれたが、俺に答えられることなど皆無に等しかったことは言うまでもない。時にはかまをかけられているらしい気配もあったのだが、実際に何一つ知らない俺がそんなものに引っかかるはずもなく。
事件の話を聞かされた際の俺の反応が演技には見えなかったことや、脱獄を手引きしたのが自分だというならその時に一緒に逃げている、わざわざここに留まる理由がない、という俺の主張が尤もだったこともあり。当初は看守連中に一挙手一投足を見張られているような気配を感じて窮屈だったムショ生活も今では少しずつ元の様子を取り戻してきている。
ただ、一部の勘のいい連中――例えばジョシュアとかロイドのような奴らは、相変わらず俺に何かを尋ねたそうな様子を隠せずにいる。連中が、誰が聞いているかも分からないような場所で話しかけてくるほど無分別な馬鹿じゃないのが救いだった。
あいつら二人が俺に訊きたいことなら、だいたい見当がつく。俺が幹部の脱獄を手伝ったかどうかについては、あの二人のことだ、問うまでもなく黒だと確信していることだろう。だから、彼らの疑問の核は「何故お前も一緒に逃げなかったのか」という一点に集約されるに違いない。
現在のマジソン刑務所が以前のような緩い空気に戻っているのは、ゴンザレスたちが殺されたことを切欠にしてこの刑務所の不祥事が露呈したからだ。それ以前の地獄もかくやのクソッタレた有様だった刑務所から、出て行きたいと願うならまだしも、出て行くチャンスがあったのに好き好んで残るはずがない。少なくとも、ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテという男ならばチャンスさえあれば絶対に出て行ったはずだと、そう、思っているんだろう。
なのに、その男はせっかくのチャンスを棒に振って刑務所に残った。何かここに居残るべき理由があったからなのか、それとも――もしかしてクソッタレた状況が変化することを知っていたのか。そんなようなことを考えているんだろう。もちろん、俺はそんなことは予想すらしていなかった。ここに残ったのにはそれ以外の理由がある。だが、それを他人に上手く説明できる気はしなかったし、したいとも思えない。
もしもジョシュアとロイドに問われてしまったなら、適当な嘘を繰り広げるしかないだろう。嘘をつくのはそう苦でもない俺だが、好ましいと感じている人間に対して嘘をつき続けることを楽しいと思えるほどには腐っていない。だから、二人に対しては、このまま何も訊かずにいてくれたらいいと願うばかりだ。
こちらの絵に滾って書いた。雪原ENDから時間遡行したバクシーが〝脱獄=死〟と考えて、ムショ内にジャンさんを引き止めようと身体張って頑張る話。
イチャコラまったりムショEND - 3/6
20,848文字 / 約24分
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